たばこ(喫煙)と癌の関係|ガン治療はOGC大阪がんクリニック

煙草の危険性

煙草の危険性

 がんの部位別情報の原因にも記載していますが、煙草は『がんになる原因』の一つとして、必ず挙げられます。
 勿論、知識として、タバコは体に有害な物質を含んでいるというイメージは、誰もがもっていると思います。
 更に、喫煙者だけでなく、副流煙による受動的な有害物質の摂取もまた様々な健康被害を受ける可能性があるとされています。
 こういった健康被害の中で、『がん』は多くの人に恐れられています。
 現状、喫煙者とがんの相関関係は強くみられるというイメージを持たれている方は多いと思いますし、『タバコは発がんリスクに繋がること』は事実です。

 因みに、国立がんセンターによると、日本の研究では、がんになった人の内、男性:30%・女性:5%はたばこが原因だと考えられています。また、がんによる死亡においては、男性:34%、女性:6%は、煙草が原因だと考えられています。

 現代では、学校教育からたばこの危険性を学んでいる学生の方々も多いと思いますので、『タバコは発がんリスクに繋がること』を既にご存知の方も多いと思いますが、実際に、何故タバコはがんの原因になるのかについて詳しく知っている方は少ないのでは無いでしょうか?
 煙に含まれる発がん性物質等の有害成分は、主流煙より副流煙に多く含まれるものがあり、喫煙者がマナーを守ればよいという考え方だけでは解決できない健康問題です。
 さて、ここからは、煙草とがんの関係について迫っていきたいと思います。

たばこの有害性を判断する際に必要な情報

たばこの有害性を判断する際に必要な情報

①たばこの健康影響評価について

 下記でも『喫煙と疾患の因果関係判定』といった評価判定を取り入れていますが、実際にはどの機関がどのように判断しているのかといった概要について、触れていきたいと思います。

 たばこの健康影響については,国の政府機関や国際機関、研究グループ等が包括的評価を行っており、海外では米国の公衆衛生総監報告書(A Report of the Surgeon General)及びに国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer; 以下 IARC)モノグラフシリーズが代表的です。

 これらの包括的評価の特徴については、cohort研究や症例対照研究等の疫学研究について系統的にレビューをして、生物学的な機序等を総合的に吟味した上で、たばこと各疾患との因果関係について判定を行っております。
 国内では,国立がん研究センター社会と健康研究センターを中心として、「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」グループが喫煙を含む予防危険因子とがんとの関連を包括的に評価しています。

②たばこ煙への曝露の指標

 有害化学物質の曝露時の生体指標(バイオマーカー)は、主に、曝露マーカー、 影響マーカー、感受性マーカーに大きく分類されます。喫煙において、最も広く利用されている曝露マーカーには、血液や唾液、尿中のニコチン及びコチニン等がある。
 また、毛髪や授乳中の乳汁からも検出されます。
 更に、発がん性物質のたばこ特異的ニトロソア ミン(TSNA)の尿中代謝物も、曝露マーカーとなっており、加えて禁煙外来でも指標と される呼気中一酸化炭素濃度もあります。
 一酸化炭素は,ヘモグロビン親和性が高く,血液中のカルボキシヘモグロビン(CO-Hb)もまた曝露の指標となります。

 たばこ煙中の有害化学物質を体内に取り込んでしまった際に、たばこ煙中の多環芳香族炭化水素、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)等が生体内高分子と反応することによって、DNA付加体や蛋白付加体等が生じることがみられ,これらは曝露マーカーの中でも生物学的有効量とされています。
 影響マーカーとしては、染色体異常や突然変異の検出等があります。

 感受性マーカーは、対有害化学物質での反応に個人差・感受性の修飾を生じる代謝酵素の遺伝子多型に相当します。
 たばこ煙に関して代表的な感受性マーカーに関して,ニコチンは生体内においては薬物代謝酵素 CYP2A6により酸化反応で代謝されるのに対して、CYP2A6の遺伝子多型によりニコチン代謝に個人差が生じるとともに発がんリスクにも影響するとされています。

煙草の生産の概要

煙草の生産の概要

 まずは、タバコの構造について簡単にみていきましょう。

 タバコは、ナス科タバコ属(Nicotiana)の南アメリカの熱帯原産の植物であり、栽培種としては一年草として扱われているけれど、原産地においては多年草として扱われています。(タバコ自体はあくまで植物です。)
 因みに、現在、喫煙の用途で栽培されているものは、主にニコチアナ・タバカムとニコチアナ・ルスチカの2種類です。
 これらの葉を乾燥させてから、1年以上熟成させて、細かく切り刻んだものを紙で巻くと(紙巻き)たばこ(市販で売られている煙草)が完成します。

 また、現在のたばこ製品は,ニコチンによる喫煙を長期的に継続させる「依存性」 とヒトの健康に悪影響を与える「有害性」に加えて,メンソールなどの添加物による 「魅惑性」を有しているとされており、日本のたばこ販売量の大半は紙巻たばこを占めています。

 ここからは生産について、簡単に触れていきます。

 まず、国内のたばこは、「たばこ事業法」第8条で、JTの製造独占が明記されるおり、更に第9条では、そのたばこの品目別蔵出し価格の上限については財務大臣の認可が必要であるとされています。

 近年、喫煙の健康リスクが注目されるようになり、しかも2005年に煙草の規制に関する枠組み条約(FCTC)が発効したこともあり、先進国を中心に、世界的に見ると、煙草の需要は減少傾向にある一方で、新興国は購買力の高まりから、需要は拡大傾向にあります。
 しかし,世界的に見ると生産は着実に落ちています。

煙草に含まれる発がん性物質

煙草に含まれる発がん性物質

 タバコにおける原料は、あくまで自然界の植物であるため、たばこの煙によって健康が害されることを疑問に思う人もいると思います。
 人体に有毒な物質は、煙草の煙においては、たばこ自体に含まれる物質とそれらが不完全燃焼することによって生じる化合物になっており、その種類は合わせて約5300種類と言われています。

 煙草に火をつけて吸引する際に徐々に燃焼しますが、不完全燃焼も行われているので、様々な燃え屑が生成されて、これらは気体成分と微粒子成分とに分けられます。

 細かくいうと、たばこの煙は粒子成分とガス成分の2種類に大きく分けられ、粒子成分には4300種類、ガス成分には1000種類もの化学物質が含有されており、その内の幾つかには粒子成分とガス成分の両方が含まれると言われています。

 たばこの煙に含まれる成分は、タバコの葉に含まれるものと、乾燥や加⼯・製造過程で⽣成・添加されたもの、更に、それらが燃焼する際に⽣成されるもので構成されており、喫煙や受動喫煙では、これらをまとめて吸い込んでしまっていることになります。

 また、それらの成分には、中間産物的な化合物が無数に含まれる以外に、一酸化炭素・ニコチンといった身体に悪影響を及ぼす物質が含まれています。

 そして、それらの中には、発がん性が認められているものも多くあります。

 具体的に、それらの中にはベンゾピレン、多環芳香族炭化水素類、たばこ特異的ニトロソアミン類等、およそ70種類もの発がん性物質が含まれているとされています。

 煙草に含まれる発がん性物質の多くは、煙草そのものや、体内で代謝される過程で生成される物質が遺伝子にダメージを与えることが判明しています。

 具体的に例を挙げると、たばこに含まれる代表的な発がん性物質であるベンゾピレンは、体内で代謝される際の中間生成物が遺伝子の複製を阻害し、がん抑制遺伝子であるTp53に不可逆的なダメージを与えると考えられています。その結果、がん細胞の増殖が止まらず、がんを発症しやすくなるのです。

  また、たばこ煙への曝露は,動脈硬化や血栓形成傾向の促進等を通じて、虚血性心疾患や脳卒中等の循環器疾患にも繋がってしまいます。

煙草の生産の概要

たばこ1 本に含まれる化学物質の重量主流煙及び副流煙の比率

成分 副流煙/主流煙比
一酸化炭素 3.4-21.4
ニコチン 2.8-19.6
タール 1.2-10.1
カルボニル類 ホルムアルデヒド 6.2-121.4
アセトアルデヒド 2.2-14.4
アセトン 2.5-11.5
アクロレイン 4.3-29.0
プロピオンアルデヒド 2.4-14.6
クロトンアルデヒド 3.7-20.8
メチルエチルケトン 2.3-14.3
ブチルアルデヒド 2.3-8.6
窒素酸化物 一酸化窒素 15.8-61.3
窒素化合物 16.3-64.6
アンモニア   294.2-2,565.5
揮発性有機化合物 1,3-ブタジエン 6.3-43.0
イソプレン 6.0-37.4
アクリロニトリル 10.5-88.6
ベンゼン 8.2-42.0
トルエン 10.9-68.8
ベンゾ[a]ピレン   7.6-48.8
たばこ特異的ニトロソアミン類 NNN : N -ニトロソノルニコチン 0.8-3.7
NAT : N -ニトロソアナタビン 0.4-1.9
NAB : N-ニトロソアナバシン 0.7-1.6
NNK : 4-(メチルニトロソアミノ) 1.9-4.9
-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン

市販たばこ7種類での最小値-最大値

 表は、主流煙と副流煙に含まれる有害化学物質の含有量を比較したものであり、『副流煙/主流煙』の比が1より大きいものは、主流煙よりも副流煙に多く含まれていることを指します。
 また、たばこの銘柄別でも、全銘柄で副流煙の方が主流煙より多くの有害化学物質を含んでいます。
 更に、低タール・低ニコチンたばこの方が、主流煙の化学物質量が低い故に、この比率が高くなる傾向が認められています。
 室内環境下での喫煙は、副流煙に含まれる有害化学物質が一気に室内空気に拡散し、喫煙者を含む多くの人の健康に影響を及ぼすことが明らかになっています。

紙巻たばこ煙有害物質の主流煙と副流煙中の含有量

●発がん物質(ng/本) 主流煙(MS) 副流煙(SS) SS/MS比(SS)
ベンゾ(a)ピレン 20-40 68-136 3.4
ジメチルニトロソアミン 5.7-43 680-823 19-129
メチルエチルニトロソアミン 0.4-5.9 9.4-30 5ー25
ジエチルニトロソアミン 1.3-3.8 8.2-73 2-56
N-ニトロソノルニコチン 100-550 500-2750 5
4-(N-メチル-N-ニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン 80-220 800-2200 10
ニトロソピロリジン 5.1-22 204-387 9-76
キノリン 1700 18000 11
メチルキノリン類 700 8000 11
ヒドラジン 32 96 3
2-ナフチルアミン 1.7 67 39
4-アミノビフェニール 4.6 140 30
O-トルイジン 160 3000 19
●その他の有害物質(mg/本) 主流煙(MS) 副流煙(SS) SS/MS比
タール(総称として) 10.2 34.5 3.4
ニコチン 0.46 1.27 2.8
アンモニア 0.16 7.4 46
一酸化炭素 31.4 148 4.7
二酸化炭素 63.5 79.5 1.3
窒素酸化物 0.014 0.051 3.6
フェノール類 0.228 0.603 2.6 0.228 0.603 2.6

 また、タバコの危険物質は、ニコチン、タールだけではないことは上記に示しましたが、他の有害物質は以下のものに置き換えられます。
 ヒ素は、四大公害病の原因等で、目にしたことがある方も多いと思います。

化学物質 これらを含むものの例
アセトン ペンキ除去剤
ブタン ライター用燃料
ヒ素 アリ殺虫剤
カドミウム カーバッテリー
一酸化炭素 排気ガス
トルエン 工業溶剤

ニコチンとタールの違い?

ニコチンとタールの違い?

 喫煙者でなくても、煙草に含まれている成分として『ニコチン』、『タール』という名称はご存知だと思いますが、両者の特徴や身体への影響について、深く理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。  実際には多くの部分で異なっており、どちらも体に悪影響を与える成分を含んでおりますが、正しい知識を持って理解することは重要です。  

ここからは、ニコチン、タールについて説明します。  

まず、ニコチンは化学物質として、身体への影響がとても大きく、また依存性の強い成分となっています。  喫煙者の中には、嗜好品として手放せなくなってしまっている方も少なくないと思われます。(行き過ぎるとニコチン中毒者になります。)  一方で、タールは、馴染みのある名称として、「ヤニ」と呼ばれており、喫煙時に必ず生じる煙の中で、ガス成分等を取り除いた粒子状の成分を指します。

 タールは、粘質性が高いので、喉や肺にずっと留まり、身体へ影響を及ぼします。  また、着色性も強く、歯や部屋のクロスが黄ばむ原因にもなります。更に、独特な強い匂いを有しており、口臭の原因にも繋がります。

タバコの臭いと発がん物質は最低半径〇mまで届く !?

タバコの臭いと発がん物質は最低半径〇mまで届く !?

 「無風状態で、たばこの煙の粉塵と発がん物質が、どこまで届くか」という実験で、最低7m届くという結果が出ました。  風がある場合、かつ喫煙者が数人集まっている状態では、その2~3倍程度の範囲に煙が届くことになります。

 そのため、たばこを吸わない人達を受動喫煙から守るための喫煙所を屋外に作るには、最低でもテニスコート2面分の広さが必要となります。

目に見える煙は1割

 タバコの煙で、われわれの目に見える粒子部分は、およそ1割程度に対して、目に見えないガスの部分が9割を占めています。  更に、タバコ1本吸うだけで、およそドラム缶50本分の空気を汚染しています。

健康面や依存の有無

健康面や依存の有無

①健康面における影響

 ニコチンを摂取により、血管はすぐに収縮し、そのことから、心拍数の急上昇や不規則性が見られるようになります。  また、ニコチンを分解する過程において、発生するニトロソアミン類については、身体への大きな影響があると考えられています。

 一方、タールは、身体に悪い影響を及ぼす成分が60種類以上含まれているため、健康面における影響も一層大きな恐れがあります。近年、「低タール」を売りに安全性をうたっている煙草も市場で見られるようになりましたが、個人の吸い方によって、タールの摂取量は大きく異なります。

 低タールの煙草でも、吸う本数が多ければ、タールの摂取量は変わりないので、『低タールのたばこは健康面に影響がほぼ及ばないない』という考え方は、必ずしも成り立たないことを留意しましょう。

②依存性の有無

 ニコチンは、脳内で『ニコチン受容体』という物質と結びつき、快感を司る物質であるドーパミンの大量分泌を促進させます。  喫煙によって、このドーパミンが急激に分泌される状態を繰り返すことで、ニコチンへの依存が起こるのです。

 禁煙期間中にイライラしたり、集中力が低下したりするのも、ニコチンの依存性の影響によるものです。  最悪の場合、ニコチン依存症となり、病院の治療が必要不可欠です。そして、一生、向き合わなければいけなくなります。  一方、タールには依存性はないと言われています。

受動喫煙でもがんになる?

受動喫煙でもがんになる?

 自身が喫煙をしていないにも関わらず、喫煙者が吸入した煙(主流煙)の吐出煙と、煙草の先端から出る煙(副流煙)とが、空気中で拡散し、薄められた煙(環境タバコ煙)を本人の意思とは関係なく吸わされてしまうことを受動喫煙と言います。

 因みに健康増進法第25条では「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義されています。
 煙草を直接吸っていないため、健康被害は少ないと考えられがちですが、実際は煙草から直接吸い込む煙よりも受動喫煙で吸い込む煙(副流煙)の方が有害物質を多く含んでいることが分かっています。

(主流煙にも多くの有害物質が含まれていることは勿論なのですが、副流煙は燃焼温度が低く、フィルターを通過しないため、有毒物質が主流煙の何倍も濃度で含まれていることが明らかになっています。)

 また、煙に含まれる有害物質の大きさも副流煙の方が小さいので、吸い込むことで肺の奥深くまで有害物質が浸透してしまい、がんのリスクがより高くなってしまうことも指摘されております。

 因みに、喫煙者が口から直接吸い込む煙を主流煙、煙草の先から立ち上る煙を副流煙と言います。

 つまり、主流煙より副流煙の方が遥かに危険なのです。

 以下は、主流煙と副流煙を比較して、煙から摂取される有毒物質の含有量を分かりやすく示したものになります。

たばこの煙に含まれる有害物質 性質 主流煙に対する副流煙の含有量
物質名
ニコチン 有害物質 2.8倍
ナフチルアミン 膀胱発がん物質 39. 0倍
カドミウム 発がん物質・肺気腫 3. 6倍
ベンツピレン 発がん物質 3. 9倍
一酸化炭素 有害物質 4. 7倍
ニ卜ロソアミン 強力な発がん物質 52. 0倍
窒素酸化物(NOX) 毒性 3. 6倍
アンモニア 粘膜刺激・毒性 46. 0倍
ホルムアルデヒド 粘膜刺激・せん毛障害・咳反射 50倍

環境タバコ煙(Environmental tobacco smoke; ETS) について

環境タバコ煙(Environmental tobacco smoke; ETS) について

 たばこの煙は、以下の通りに分類できます。 1喫煙者が吸い込む煙(主流煙) 2点火部分から立ち昇る煙(副流煙) 3喫煙者から吐き出される煙(呼出煙)に区別されます。  実際に受動喫煙に関与する煙において、副流煙(85%)と呼出煙(15%)をまとめて環境たばこ煙とも呼ばれます。  

(喫煙しない人が、本人の意思とは関係なくこの2・3の煙を吸わされてしまうことを「受動喫煙」と言います。)  この呼出煙も強く問題視されている煙草による健康被害の一つで、喫煙者はたばこを吸い終わった後でも、数十分間は、口から有害物質を放出しております。

 (喫煙者の吐く息には、タバコを吸っていない時でも、一酸化炭素をはじめとするタバコ由来の有害物質が含まれており、例えば、一酸化炭素は最後の1本を吸ってから、最低8時間は息から出ています。)  そして、周囲の人達は、見えないタバコの害をいつまでも受け続けるのです。  更に喫煙者の息は、環境基準10ppmを遥かに超え、吸わない人の息は大体4ppm以下とされています。

受動喫煙の現状と推移

受動喫煙の現状と推移

 2013年に行われた国民健康・栄養調査では、非喫煙者のうち受動喫煙が家庭で「ほぼ毎日」あったと回答した割合は、20歳以上の男女合計で 9.3%、職場で「月1回以上」あったと回答したのは 33.1%でした。

同様に、非喫煙者のうち月に 1 回程度以上あったと回答した者の割合は、飲食店では46.8%、行政機関では 9.7%、医療機関では 6.5%、学校では 28.2% (但し、学校では20-29歳の男女のみを対象)でした。  

労働者健康状況調査によると、職場で喫煙しない労働者が受動喫煙にさらされている者(毎日または時々の受動喫煙あり)の割合は,男女合計で 72.9%(2002年)、56.4%(2007年)、42.2%(2012年)でした。  

また、21 世紀出生児縦断調査によると、乳児(0.5 歳児)の両親の10.9%が、両親が自宅室内で喫煙していたとされています(2001 年)。  そして両親の何れかが室内で喫煙している割合は 36.8%(2001 年)、14.4%(2010 年)でした。  

また、受動喫煙は、2018年の調査では、2015〜2017年の3年間と比較すると急速に増加したと、ダナファーバーがん研究所の研究者らがJAMA Network Open誌の8月28日付リサーチレターで報告されています。  

以下の分析は、米国疾病対策予防センターによる全国青年タバコ調査(National Youth Tobacco survey)で収集したデータを用いて行われました。  調査によると、中高生の約33%が電子たばこの受動喫煙にさらされたと回答しており、直近の3年分の調査結果と比較しておよそ3割増加していると、ダナファーバーのAndy S.L. Tan氏は語っています。

Tan氏は、電子たばこから一連の有害な化学物質が放出されることから、この受動喫煙の増加を「懸念すべき状況」としました。 電子たばこの煙にもまた、ニコチンアルデヒド、グリセリン等の様々な化学物質が含まれています。  

「多くの研究で、受動喫煙は、喫煙者の近くにいる人、有害物質の影響を受けやすい年代(特に子どもや10代の若者等)に健康被害を及ぼす可能性があるとの結論に達しています」とTan医師は述べています。  

電子たばこによる受動喫煙が増えている一方で、従来の煙草(紙巻きたばこ)による受動喫煙も依然として深刻な公衆衛生上の懸念として明らかになってきています。  調査に参加した生徒の約半数が従来の煙草の受動喫煙を訴えており、Tan医師はそのような受動喫煙は電子タバコの煙霧よりも遥かに有害であると述べています。  そして「電子たばこを含む沢山の種類のたばこ製品の放出物質に若者がさらされるのを防ぐために、親や若者に対する受動喫煙の害についての教育や若者の電子たばこ使用を減らす取り組みが必要である」という見解を研究者らは加えています。

幼児の受動喫煙について

(pediatricsより)

喫煙場所 暴露スコア
ドアを閉めて戸外で喫煙 1
ドアを開けて戸外で喫煙 1.99
台所の換気扇の下で喫煙 2.39
換気扇の側・開けたドア側・戸外でも 3.23
家の中で喫煙 15.09

 窓の外で煙草を吸った場合でも、子どもは1.99倍の影響を受けています。
 それは、喫煙者の髪や服には煙草の臭いと共に有害物質が付着しているからです。
(これを残留物質といい、三次喫煙にて詳しく説明します。)
 受動喫煙がずっと続くと、気管支喘息や慢性副鼻腔炎、乳幼児突然死症候群等になるリスクが高くなります。

意外に知られていない煙草の危険性

意外に知られていない煙草の危険性

①見えない「サードハンド・スモーク」!?

 サードハンドスモークとはタバコを消した後の残留物から有害物質を吸入することで、三次喫煙や残留受動喫煙とも言います。  前室で喫煙者が利用していた場所に赴く際に、喫煙者はいないけれど「タバコの臭い」が部屋に残留していたり、タバコの臭いが服や髪に付着してしまうことで、有害物質の暴露を被ってしまうことです。  幼児は特に、家族内に喫煙者がいる場合、健康被害を受けてしまう傾向にあります。

 因みに、煙草を吸う際に子供の健康も考慮して、ベランダ等、外で煙草を吸うだけでは十分な対処とは言えないのです。  外で喫煙した後、最低でも40分は外にいなければ、残留物質からの被害は避けられないとされています。

②軽い煙草ならば健康被害は小さくなる!?

 近年、若者や女性をターゲットにした煙草で『低タール・低ニコチン』のタバコが増えています。

 「低タール・低ニコチン」のタバコならば、体内に取り込まれる有害物質が減ると思っている方は少なくないと思われますが、実は違います。寧ろ節煙は逆効果であると言われています。  たばこを吸う人によって、それぞれに必要とする血中ニコチン濃度が異なり、『低タール・低ニコチン』のタバコに変えると、意識しなくても、喫煙者は以下のような行動をとってしまいます。

本数が増える 根元まで吸う 深く吸い込む 頻回に吸う  結果として、ニコチン・タールは殆ど減らないどころか、逆に一酸化炭素量は増加するといわれています。  実際に、血中ニコチン濃度も節煙前後で、およそ1.5倍も変化がみられます。

 因みにタバコのパッケージにはタールとニコチンの値が表示されていますが、これらの数値は、機械によって測定されています。  国際標準化機構(ISO)が定めた方法によると、機械により、1分毎に2秒間かけて35ml(ピンポン玉とほぼ同じ)の煙をフィルターの近くまで吸い込ませることで測定しています。  また、余談ですが、たばこの吸い方によっても、有害物質の摂取量は変化します。

 たばこのフィルターには、空気が入る穴がありますが、測定時には、この穴は完全に開いているのに対して、実際は、煙草を吸う際に、唇や手等でフィルターの穴が塞がってしまい、表記のニコチン・タール以上に有害物質を摂取してしまっているというカラクリが働いているのです。

③新型たばこは大丈夫?

 近年、火を使わない加熱式たばこを吸う人が増えています。

 加熱式たばこは、紙巻きたばこと比較すると健康への悪影響や受動喫煙の影響が少ないとアピールされていますが、旧型の煙草と比べてみるとタールが削減されていても、あくまで依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品です。

 結論を述べてしまうと、煙草であることには変わりないので、発がんのリスクは十分にあり、様々な研究から明らかになってきています。  2017年10月に、日本呼吸器学会は「非燃焼・加熱式たばこや電子たばこに対する見解」を以下のように述べています。

 非燃焼・加熱式たばこを使用することで、健康に悪影響がもたらされる可能性がある非燃焼・加熱式たばこの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じるおそれがあり、紙巻きたばこ同様、公共の場での使用は認められない  現在、国内で販売されている加熱式たばこには、全てニコチンが含まれているため、加熱式たばこに替えても、ニコチン依存は軽減しません。

また、加熱式たばこを継続して使用することで、病気や死亡のリスクが今後どれほど高まるのかが明確になるまでにはかなりの時間を要します。現時点で「健康への悪影響が少ない」といわれているのは、あくまで推測に過ぎません。

 加熱式たばこであっても、吸う人が有害物質を取り込んでいること、周囲にも有害物質が広がっている可能性は高いとされています。  そして、臭いが薄く、吐き出す煙も見えにくいので、受動喫煙に気がつきづらいことも懸念されています。

 健康の為にも、ぜん息、COPDの悪化を防ぐためには、禁煙が第一です。 ※因みに、新型たばこは、 1)加熱式たばこ たばこ葉を燃やさず、加熱することでニコチンを発生させるたばこ。 2)電子たばこ リキッド(液体)を加熱してエアロゾルを発生させ吸引するたばこ。 が挙げられます。

たばこと関連のあるがん/健康障害

上記からも分かる通り、煙草は受動喫煙も含めて、多くの発がん性物質を体内に取り込んでしまうため、がんの発症に強い相関がみられることがわか ります。
 一般的に、煙草の煙を吸い込むと、真っ先に行き渡る口・のど・肺、血液中に吸収された発がん性物質の通り道となる肝臓・腎臓・膀胱、唾液などに溶けた発がん性物質にさらされる食道・胃などの器官のがん発症率が高くなるとされています。
 
科学的に証明されているがん
 厚生労働省による「喫煙の健康影響に関する検討会」(2016年)では、部位別にたばこによるがん発生のリスクにていて4つのランク分けが行われました。

レベル1 科学的証拠は、因果関係を推定するのに十分である
レベル2 科学的証拠は、因果関係を示唆しているが十分ではない
レベル3 科学的証拠は、因果関係の有無を推定するのに不十分である
レベル4 科学的証拠は、因果関係がないことを示唆している

 厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(2016年)より作成

 様々な研究によって科学的に因果関係が証明されているものを「レベル1」とし、鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんが「レベル1」のカテゴリーに含まれています。
 また、国際がん研究機関(IARC)の発表では、上記の他にも、大腸がん、腎臓がん、尿管がん、卵巣がん、骨髄性白血病も煙草との因果関係があると判定されています。
 代表的ながんの科学的根拠は次の通りです。

(a)肺がん

肺がん

 煙草と言えば、まず肺がんを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。  煙草を吸う際に、肺は煙草の煙が直接に接触する部位であるため、肺細胞の遺伝子変異を引き起こし、がんが発生しやすいことが分かっています。  また、長期の研究で喫煙指数(喫煙年数×1日の喫煙本数)が高いほど肺がんの発症率上がり、禁煙することで発症リスクは減少するとされています。このことから、煙草は肺がんを引き起こす要因と考えられます。

(b)口腔がん、咽頭がん、喉頭がん

口腔がん、咽頭がん、喉頭がん

 口や喉もまた肺と同様に、喫煙時に煙草の煙に直接あてられる部位となっています。  口や喉の粘膜が長い間、発がん性物質と接触すると、遺伝子が傷ついてしまいます。  また、がんの前段階である「前がん病変」も生じやすく、更に煙草を吸い続けることでやがてがんまで進行してしまうケースが多いとされています。

(c)胃がん

胃がん

 胃がんの主な原因と言えば、ピロリ菌をイメージなさる人も多いと思いますが、煙草もまた発がんにおいて、密接な関りがあるとされています。  胃は発がん性物質が溶けた唾液等から接触してしまうことで、がんを引き起こしてしまい、更に言えば、そういった接触によりがんが発生しやすい部位なのです。  煙草に含まれる発がん性物質の中には、がん抑制遺伝子の一種であるCDH1遺伝子にダメージを与えるものがあり、それによってがんが引き起こしやすくなっています。

(d)肝臓がん

肝臓がん

 肝臓は、血液に関して非常に重要な働きをする臓器であるため、血中に含まれた発がん性物質から影響を受けやすく臓器なっています。  その上、発がん性物質の中には肝臓で分解されるものもあり、そのことから継続的に発がん性物質の被害を受けてしまいます。その結果、肝細胞のDNAがダメージを受けてしまうことから発がんが促されます。  又、煙草の煙に含まれる炎症性物質が原因で肝臓の細胞は線維化することがわかっており、肝硬変のリスクを高めてしまうことから、肝臓がんの発症率が上がると考えられています。

(e)膀胱がん

膀胱がん

 尿が蓄積される膀胱には、尿と共に排出される発がん性物質が多く含まれます。  その結果、発がん性物質が膀胱内壁の細胞の遺伝子にダメージを与え、がんを引き起こすのです。  又、膀胱がんを引き起こす主な発がん性物質となるBアリルアミンを代謝する酵素において、欧米人よりも日本人の方が代謝速度の速いタイプが多いとされているため、煙草による膀胱がんの発症率は日本人の方が欧米諸国と比べ低い傾向にあると考えられています。

主流煙におけるがんとがん以外の健康被害

主流煙におけるがんとがん以外の健康被害

レベル1と判定 鼻腔・副鼻腔がん 口腔・咽頭がん 喉頭がん 食道がん 肺がん 肝臓がん 胃がん 膵臓がん 膀胱がん 子宮頸がん 妊娠・出産 早産 低出生体重 胎児発育遅延 その他 COPD 呼吸機能低下 脳卒中 ニコチン依存症 歯周病 結核(死亡) 虚血性心疾患 腹部大動脈瘤 末梢性の動脈硬化 2型糖尿病の発症

受動喫煙におけるがんとがん以外の健康被害

受動喫煙におけるがんとがん以外の健康被害

レベル1と判定 「大人」 脳卒中 臭気、鼻への刺激感 肺がん 虚血性心疾患 妊娠・出産 「子ども」 乳幼児突然死症候群(SIDS) 学童期以前のぜん息の既往 レベル2と判定 「大人」 急性呼吸器症状(ぜん息患者・健常者) 急性の呼吸機能低下(ぜん息患者) 慢性呼吸器症状 呼吸機能低下 ぜん息の発症、コントロール悪化 COPD 「子ども」 ぜん息の重症化 ぜん息の発症(親の喫煙との関連) 呼吸機能低下 学童期のせき、痰、ぜん鳴、息切れ(親の喫煙との関連) 中耳疾患 虫歯  上記の判定は、米国公衆衛生総監報告(2006年、2014年)や国際がん研究機関「ヒトへの発がん性リスク評価モノグラフ」(2004年、2012年)等、海外で行われた評価とほぼ同じ結果になっています。

禁煙の効果

『今すぐ禁煙する』、若しくは『禁煙の努力をする』ことによって、長期的な健康被害の可能性の大幅な低減に繋がります。
 更に、禁煙してから10年後、肺がんのリスクは喫煙者と比べると約半分まで低下し、口腔がん、食道がん(扁平上皮がん)、胃がん、喉頭がん、膀胱がん、子宮頸がん(扁平上皮がん)のリスクも低下することが分かっています。
 喫煙者は、生涯たばこを吸わない人より10年程度余命が短くなるといわれていますが、但し35歳より前に禁煙すれば、煙草による死亡リスクの増加を回避できるともされています。そして喫煙のせいで、日常生活動作の低下や認知症の発症リスクが上昇することも示唆されています。禁煙によって、『健康に』かつ『充実して』長生きできる可能性を高めることが出来ます。
 そして、がん以外の循環器や呼吸器の病気は、禁煙してから1年程度で大幅にリスクが低下することが示されています。
 世界保健機関「たばこ使用者のための禁煙ガイド」(2014年)より喫煙のメリットを以下に記載します。

表 禁煙による健康へのメリット ファクトシート

A. あらゆる喫煙者にとって、禁煙はすぐに、また長期的な健康上のメリットがある

禁煙してからの経過時間 健康上の好ましい変化
20分以内 心拍数と血圧が低下する
12時間 血中一酸化炭素値が低下し正常値になる
2-12週間 血液循環が改善し肺機能が高まる
1-9カ月 咳や息切れが減る
1年 冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の約半分に低下する
5年 禁煙後5-15年で脳卒中のリスクが非喫煙者と同じになる
10年 肺がんのリスクが喫煙者に比べて約半分に低下し、口腔、咽喉、食道、膀胱、頸部、膵臓がんのリスクも低下する
15年 冠動脈性心疾患のリスクが非喫煙者と同じになる

B. 全年齢層ですでに喫煙関連の健康問題が生じている人にもたらされるメリット。それでも禁煙のメリットはある

禁煙の時期 喫煙を続けている人と比較したメリット
30歳頃 寿命が約10年長くなる
40歳頃 寿命が9年長くなる
50歳頃 寿命が6年長くなる
60歳頃 寿命が3年長くなる
生命に関わる疾患の発症後 心臓発作の発症後に禁煙すれば、次の心臓発作が起きる可能性を50%低下させるなど、迅速な効果がある

C. 禁煙によって、呼吸疾患(喘息ほか)や中耳炎など、受動喫煙関連の多くの小児病の過度のリスクを減らすことができる
D. 禁煙によって、性的不全、不妊、早産、低出生体重児、流産の可能性が低下する

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