目次
肺とは
肺は胸腔と呼ばれる胸の中にある左右一対の臓器です。肺は葉と呼ばれる部分から構成されており、右肺は3葉(上葉、中葉、下葉)、左肺は2葉(上葉、下葉)に分かれています。肺はいわゆる呼吸を行なう臓器ですが、空気は口・鼻・咽頭・喉頭・気管を経て左右の気管支から肺に入ります。気管支は肺の中で細気管支と呼ばれるさらに細い管に分かれ約23回枝分かれして、肺胞と呼ばれる酸素と二酸化炭素を交換する場所へ到達します。
肺がんとは
肺は、多くの細胞から構成されている臓器で、発生するがんの種類も多くあります。肺がんの組織型分類は、まず『非小細胞肺がん』と『小細胞肺がん』の2つに大別されます。肺がんの中で発症するのが多いものは非小細胞肺がんで、肺がんは90%が非小細胞肺がんとされており、『腺がん』、『扁平上皮がん』、『大細胞がん』に分類されます。そして、非小細胞肺がんの中で最も多いものがんは『腺がん』で、「肺腺がん」とも呼ばれています。
小細胞肺がんは、非小細胞肺がんと比べて増殖速度が速く、転移や再発をしやすい腫瘍です。組織学的には肺は多くの細胞から構成されている臓器であり、発生するがんも多数あります。その中で、『大細胞がん』、『小細胞がん』、『腺がん』、『扁平上皮がん』と、この4つが組織型で肺癌における大多数となります。この4種類の肺がんはその発生する部位や成因または発育や転移の仕方、放射線照射や抗がん剤に対する反応等が異なり、これらの特性を理解することが、適切な治療方法または検診の方法を考える上で重要な事となります。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると、2017年に亡くなった方が多いがんとして、男性では1位が肺がん、女性では2位が肺がんで、男女計で見ても肺がんは死亡数が1位となっています。
組織型分類
非小細胞肺がん
腺がん
腺がんは、肺の端の方に生じやすいタイプのがんで、自覚症状(咳または痰など)はあまり出ません。 こちらは喫煙との因果関係がある可能性は比較的低く、非喫煙者の場合でも多数発生する可能性があると言われています。また男女を比較した場合、腺がんは女性の割合が多いとされています。肺がんの中でも腺がんは最も多い組織型であり、肺癌全体の内約4割を占め、年々増加傾向にあります。 腺がんは、「転移等をしていない非浸潤がんの段階」において早期に特定が可能で、この時期であれば、小さな手術で根治できると考えられています。
扁平上皮がん
扁平上皮がんは、太い中枢の気管支にできる事が比較的多く、こちらは咳や血痰などの自覚症状が分かりやすい段階で掛かります。 がんによっては、気道が閉塞されて無気肺と呼ばれる一部空気が肺に入らない状態を作るケースがあります。
また、こちらに関しては喫煙との因果関係が高いとされています。肺の中枢側に生じる事が多いため、早期の段階では心臓や大血管の陰影と重なってしまう事があり、X線を用いた写真での発見が困難とされています。 早期に発見するには痰の検査などを定期的に行う事が有効であり、他の3つの型より早期に発見された場合には、治療成績が良いと考えられています。
大細胞がん
大細胞癌は、肺の末梢に大きな腫瘤をつくるケースが多いです。 大細胞癌は転移が生じやすい状態で、主に遠隔臓器のリンパ節へ拡散する可能性があります。放射線療法や抗がん剤による効果が求めにくいため、治療成績は腺がんや扁平上皮がんより悪いとされています。
小細胞がん
太い気管支に形成されやすく、扁平上皮がんと同様とされています。 また、扁平上皮がんと同じように喫煙との因果関係が高いと考えられています。また、早期段階からリンパ節や遠隔の臓器に転移し易い傾向にあり、癌の発育も早いため、中でも悪性度の高い肺癌と言えます。 しかし、抗がん剤や放射線治療に対する反応はその他3つの肺癌と比較しても良好であり、集学的治療の効果が期待されます。
肺がんの原因
肺がんは、肺細胞の遺伝子に傷がつくことで発生します。
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- 喫煙
たばこを吸うと肺がんにかかるリスクが、男性はおおよそ5倍・女性はおおよそ4倍に増加します。喫煙年数や喫煙本数が多いほどリスクが高くなり、禁煙を続けるほどリスクは徐々に低下していきます。また、受動喫煙によっても、肺がんのリスクは約1.3倍に増加します。
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- 環境
タバコや排気ガス等からくる大気汚染など職業的曝露でアスベスト等を摂取した方は、肺がんの発生率が上がる要因です。
肺がんの症状
非小細胞肺がん
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- 咳、痰、血痰
これらは、肺門型肺がんでみられる症状です。咳、痰は肺がん患者に多くみられますが、肺炎等の症状でもあるので決定打とはなりません。しかし、血痰が出た時は、要注意です。
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- 胸痛、背部痛
肺野型肺がんは、肺門型に比べて自覚症状に乏しいですが、転移等で肺がんが深刻化されたら胸痛、背部痛等の症状が見られます。
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- 呼吸困難
肺野型肺がんが胸膜に波及し、がん胸膜炎を併発して、胸水がたまったり、肺門型肺がんが気管肢を閉塞して、肺炎や無気肺を起こしたときにみられます。
小細胞肺がん
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- 咳、痰、血痰、胸痛、背部痛、呼吸困難
小細胞肺がんの初期症状は、他の肺がんと同じようにみられます。がんが、進行すると、体重減少、頸部リンパ節の腫大、上大動脈の閉塞による上半身の浮腫(上大静脈症候群)等が含まれます。
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- その他
肺野型肺がんは、肺門型に比べて自覚症状に乏しいですが、転移等で肺がんが深刻化されたら胸痛、背部痛等の症状が見られます。
肺がんの検査
がんが疑われるときは、まず、胸部X線検査や胸部CT検査などを行い、病変の有無や場所を調べます。検査で異常が見つかった場合には、肺がんが疑われる部位から細胞や組織を採取して病理検査を行い、がんかどうか、がんの場合はどのような種類のがんかについての診断を確定します。
画像検査
- 胸部X線検査
- 胸部CT検査
- PET‐CT検査
- MRI検査
- 骨シンチグラフィ
病理検査・診断
- 喀痰細胞診
- 気管支鏡下検査
- 生検
- 経皮的針生検
- 胸腔鏡下検査
- 胸膜生検
バイオマーカー検査
- がん遺伝子検査
- PD-L1検査(PD-L1免疫組織化学染色検査)
- 腫瘍マーカー検査
- 非小細胞肺がん:CYFRA21-1、CEA、SLX、CA125、SCC等
- 小細胞肺がん:NSE、ProGRP
肺がんの治療
非細胞がん
比較的早期の非小細胞肺がんの治療の中心は手術です。再発予防のため手術後に薬物療法を行うこともあります。また、体の状態、年齢、合併する他の病気などの影響で手術が難しい場合には、放射線治療を行います。
小細胞がん
小細胞肺がんの治療の中心は薬物療法です。ごく早期の場合は手術を行うこともあります。限局型の場合には、体の状態によって放射線治療を併用することもあります。
外科療法
肺がんの外科療法は、I・II期の非小細胞肺がんとI期・IIA期の小細胞肺がんを対象として、手術によってがんを除去できる場合に行います。 手術の方法は、以下の通りです。
- 肺葉切除術
- 縮小手術
- 片側肺全摘手術
化学療法
肺がんの薬物療法で使用する薬には、大別すると「細胞障害性抗がん薬」、「分子標的薬」、「免疫チェックポイント阻害薬」があり、どの薬を用いるかは、肺がんの組織分類や病期、体の状態などによって異なります。 また、肺がんに有効な抗がん剤は以下の通りです。
非小細胞肺がん
- シスプラチン
- ビンテジン
- エトポジト
- マイトマイシン
- イリノテカン
- タキソール
- タキソテール
- ナベルビン
- ジェムシタビン
小細胞がん
- シクロフォスファミド
- アドリアマイシン
- ビンクリスチン(オンコビン)
- エトポジト
- シスプラチン
- カルボプラチン
- イフォスファミド
- アムルビジン
- イリノテカン
- ノギテカン(トポテカン)
併用化学療法においては、EP療法(エトポジト+シスプラチン)、IP療法(イリノテカン+シスプラチン)が用いられ、IP療法が比較的主流になりつつあります。また、高齢者や全身状態のよくない患者様には、エトポジトとカルボプラチンを併用したものを用います。
当院でよく頂くご相談内容
当院をご利用されている患者様
以下に一般的な光免疫療法の解説をしております。
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当院の肺がん治療法
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ご来院
ご来院頂いた際はお近くのスタッフまでお気軽にお声掛けください。受付までご案内させて頂きます。また、肺がん治療において診療情報提供書や血液検査データなどをお持ちの方は、持参して頂くようお願いします。
受付
初診時は問診票の記入が必要となります。現在の肺がんの症状や、現在治療中の方の場合は現在の治療の状況など詳細にお書き頂きます。ご不明な点などございましたら、お気軽にお声掛け頂けますと幸いです。
インフォームドコンセント
問診票を元に医師や関係者により、インフォームドコンセントを行います。現状における肺がん治療方法の選定などを患者様のご意思を反映させながら決めていきます。当クリニックの説明だけでは納得できない場合には、他の病院・クリニックに意見を求める「セカンドオピニオン」もご検討ください。
同意書の記入
肺がんにおける治療方法や治療の流れにご納得いただけましたら、同意書を記入して頂きます。治療法によっては、ご希望の場合即日の治療が可能です。
今後の肺がん治療計画について
今後肺がん治療を患者様のライフスタイルとご相談させて頂いた上で決定していきます。治療を行う上で、患者様と病院側とで双方納得のいくペースを摺合せ、効果を最大限発揮できるスケジュールを計画していきます。
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【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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