目次
1. 膀胱がんとは
膀胱がんは、膀胱の内側を覆う粘膜(移行上皮)から発生するがんです。
初期段階では血尿や頻尿、排尿時の痛みなどの症状が見られますが、進行すると膀胱の壁を越えて周囲の組織や臓器、さらには遠隔臓器に転移することもあります。
膀胱がんは、進行度に応じてステージ分類され、ステージ4は最も進行した段階です。ステージ4では、膀胱以外の臓器やリンパ節への広範な浸潤や転移が認められます。
2. ステージ4の膀胱がんとは
ステージ4の膀胱がんは、次のいずれかの状態に該当します。
ステージ4膀胱がんの状態 |
---|
がんが骨盤壁や腹壁にまで浸潤している |
骨盤内、または大動脈周囲のリンパ節に転移している |
肝臓、肺、骨など、膀胱以外の遠隔臓器に転移している |
この段階では、局所療法(手術や放射線治療)だけでがんを完全に治療することは難しく、全身療法が中心になります。
3. 肝転移とは
肝転移は、膀胱がんが血流やリンパ流を通じて肝臓に転移した状態を指します。肝臓は血流が豊富な臓器のため、さまざまながんが転移しやすい場所です。
肝転移がある場合、以下の症状が現れることがあります。
肝転移による症状 |
---|
右上腹部の不快感や痛み |
食欲不振、体重減少 |
倦怠感 |
黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) |
ただし、転移初期には症状が出にくく、画像診断によって発見されることが多いです。
4. ステージ4膀胱がん肝転移の標準治療
通常、ステージ4膀胱がん肝転移に対しては、全身化学療法(抗がん剤治療)が基本となります。
代表的なレジメンには、シスプラチンベースの治療や免疫チェックポイント阻害薬(例:アテゾリズマブ、ニボルマブ)があります。
しかし、次のような場合、標準治療の実施が難しいことがあります。
標準治療が難しい要因 |
---|
体力の低下 |
腎機能の低下によりシスプラチンが使えない |
抗がん剤に対する強い副作用 |
他の持病(心疾患や呼吸器疾患など) |
そのため、患者様の全身状態や希望を踏まえたうえで、治療方針が慎重に決定されます。
5. 標準治療が難しい場合の選択肢
標準治療が困難な場合でも、患者様が諦める必要はありません。次のような治療選択肢があります。
標準治療が難しい場合の選択肢 |
---|
緩和ケア:症状の緩和を目指す治療 |
臨床試験への参加:新しい治療法へのアクセス |
低用量免疫療法:副作用を抑えた免疫療法 |
局所治療:肝臓に限局した治療(ラジオ波焼灼療法など) |
これらに加えて、光免疫療法も選択肢となり得ます。
6. 光免疫療法とは
このような標準治療が難しい膀胱がん(ステージ4・肝転移)の方に対して、光免疫療法という選択肢が存在します。
光免疫療法とは、がん細胞へ選択的に集積する特殊な薬剤に近赤外線を照射することで、がん細胞だけを破壊する治療法です。
正常な細胞への影響を抑えながら、がん細胞を狙い撃ちできる点が特徴です。
特に、標準治療の効果が得られにくいケースや、副作用に耐えられないケースにおいて、治療の選択肢となる可能性があります。
ただし、すべての膀胱がんに適用できるわけではないため、詳しい適応については専門医との相談が必要です。
当院の光免疫療法の詳細は以下をご参考ください。
7. 治療方針の決定にあたって
ステージ4膀胱がん肝転移の治療方針は、患者様ご本人の希望を最大限尊重しながら、がんの状態、体力、他の臓器の機能を総合的に考慮して決定されます。
特に、標準治療が難しい場合でも、症状緩和や生活の質(QOL)向上を目指した治療が可能です。
複数の治療選択肢を理解したうえで、医師とよく相談することが大切です。
8. まとめ
ステージ4膀胱がん肝転移は、進行がんの中でも治療が難しい状況のひとつです。
しかし、標準治療だけでなく、患者様の状態に応じたさまざまな治療法が検討される時代になっています。
光免疫療法のように、がん細胞を選択的に破壊できる治療法も新たな可能性を広げています。
希望を捨てず、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
治療の選択に迷ったときは、専門の医療機関で相談してみてください。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
医療法人社団良凰会 医師一覧