大腸がんステージ4の概要
大腸がんステージ4は、がんが原発巣(結腸や直腸)から離れた臓器に転移した進行がんの状態を指すとされています。
TNM分類では、遠隔転移を示すM1に分類され、大腸がんの中でも最も進行した段階とされます。
この段階では、がん細胞が血液やリンパ液を通じて全身に広がり、肝臓、肺、腹膜、そして副腎などの遠隔臓器に転移巣を形成する可能性があります。
副腎転移の特徴と病態
副腎は腎臓の上部に位置する内分泌器官で、コルチゾールやアドレナリンなどの重要なホルモンを産生しています。
大腸がんの副腎転移は、他の転移部位と比較して比較的まれな病態です。
特徴 | 詳細 |
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血行性転移 | 大腸がん細胞が血液を介して副腎に到達し、転移巣を形成する可能性があります。 副腎は血流が豊富な臓器であるため、がん細胞が定着しやすい環境にあると考えられています。 |
両側性転移の可能性 | 副腎転移は片側性(一側の副腎のみ)の場合もありますが、両側の副腎に同時に転移することもあります。 両側性転移の場合、副腎機能不全のリスクが高くなる可能性があります。 |
症状の多様性 | 副腎転移による症状は、転移巣の大きさや部位によって異なることがあります。 小さな転移巣では無症状のことが多く、画像検査で偶然発見されることがあります。 一方、大きな転移巣では腹痛、腰痛、体重減少などの症状が現れる場合があります。 |
ホルモン機能への影響 | 副腎転移が広範囲に及ぶ場合、副腎皮質ホルモンの産生能力が低下し、副腎機能不全を引き起こす可能性があります。 これにより、倦怠感、低血圧、電解質異常などが生じることがあると報告されています。 |
診断と病期評価
大腸がんステージ4における副腎転移の診断には、複数の画像検査が用いられることが一般的です。
適切な診断により、治療戦略の立案や予後の評価が可能となります。
検査方法 | 特徴と評価項目 |
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CT検査 | 造影CTは副腎転移の診断において重要な検査とされています。 転移巣は通常、正常副腎組織と比較して低吸収域として描出され、造影効果のパターンが正常組織と異なる場合があります。 CTでは転移巣の大きさ、数、周囲組織への浸潤の有無を評価することが可能です。 |
MRI検査 | MRIは軟部組織のコントラストに優れており、特にT2強調画像やDWI(拡散強調画像)において転移巣の性状をより詳細に評価できるとされています。 また、化学シフトイメージングにより、副腎腺腫と転移巣の鑑別診断に有用とされます。 |
PET-CT検査 | FDG-PET-CTは、がん細胞の糖代謝亢進を利用した検査で、全身の転移巣の検索に優れているとされています。 副腎転移巣では高いFDG集積を示すことが多く、他の転移部位の同時評価も可能です。 |
腫瘍マーカー | CEA(癌胎児性抗原)やCA19-9などの腫瘍マーカーは、転移の程度や治療効果の評価に参考となる場合がありますが、副腎転移に特異的ではないとされています。 |
標準治療について
大腸がんステージ4における副腎転移に対する標準治療は、患者様の全身状態や転移の範囲、他臓器への転移状況などを総合的に評価して選択されます。
標準治療には一定の効果が期待できますが、進行がんという病態の性質上、様々な課題が存在する場合があります。
治療法 | 特徴と課題 |
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外科的治療 | 副腎転移に対する外科的切除は、他に制御可能な転移がない場合や、転移巣が限局している場合に適応が検討される場合があります。 ただし、ステージ4の状態では他臓器への転移も同時に存在することが多く、根治的手術の適応となるケースは限定的とされています。 |
化学療法 | 標準的な大腸がんに対する化学療法(FOLFOX、FOLFIRI、分子標的薬など)は副腎転移にも効果を示す場合がありますが、完全寛解を得ることは困難な場合が多いとされています。 また、治療の継続により薬剤耐性が生じ、効果が減弱することがあると報告されています。 |
放射線治療 | 副腎は腎臓に近接しており、高線量の放射線照射により腎機能障害のリスクがあるとされています。 また、副腎転移は両側性の場合があり、両側への照射は副腎機能不全を引き起こす可能性があると考えられています。 |
全身管理 | ステージ4の患者様では、多臓器転移による全身状態の変化、栄養状態の問題、免疫機能の変化などにより、治療選択肢が制限される場合があります。 これらの要因を総合的に評価し、個々の患者様に最適な治療計画を立案することが重要とされています。 |
症状管理と支持療法
進行がんにおいては、症状の緩和と生活の質(QOL)の維持が重要な治療目標の一つとなります。
適切な支持療法により、患者様の生活の質を可能な限り維持することが期待できます。
管理項目 | 対応方法 |
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疼痛管理 | 副腎転移による腹痛や腰痛に対しては、段階的な疼痛管理が行われる場合があります。 軽度の痛みには非ステロイド性抗炎症薬、中等度から重度の痛みにはオピオイド系鎮痛薬が使用されることがあります。 |
副腎機能不全への対応 | 両側副腎転移や広範囲な片側転移により副腎機能不全が生じた場合、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾンなど)の補充療法が必要となる場合があります。 |
栄養サポート | 進行がんでは食欲不振、悪心・嘔吐、腸閉塞などにより栄養状態が悪化する場合があります。 適切な栄養評価と栄養サポート(経腸栄養、中心静脈栄養など)により、全身状態の維持を図ることが重要とされています。 |
心理社会的サポート | 進行がんの診断は患者様とご家族に大きな心理的負担をもたらす場合があります。 医療ソーシャルワーカー、臨床心理士などの多職種によるサポートが重要とされています。 |
選択肢としての光免疫療法
一部の医療機関では、治療選択肢のひとつとして光免疫療法を導入している場合もあります。
この治療は、がん細胞に集まりやすい性質を持つ薬剤と、特定の光を組み合わせることで、選択的にがん細胞へ作用させることを目的としています。
正常な組織への影響を抑えながら、がん細胞のみに効果を届けることが期待されています。
ただし、すべての患者様に適応されるわけではなく、対応している医療機関も限られているため、詳しくは医師にご相談いただくことが推奨されます。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
まとめ
大腸がんステージ4における副腎転移は、予後に影響を与える可能性がある病態ですが、標準治療により症状の改善や生存期間の延長が期待できる場合があります。
適切な症状管理と支持療法により、患者様のQOLを維持し、可能な限り生命予後の改善を図ることが重要とされています。
患者様とご家族は、医療チームとの密接な連携のもと、個々の状況に応じた治療戦略を検討することが重要です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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