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膵臓がんのリンパ節転移(ステージⅣ)に関する治療の選択肢
膵臓がん(主に膵管腺がん、PDAC)は診断時の半数以上がステージⅣ(遠隔転移あり)の進行がんであるため、発見が遅れやすく、転移が広範に及ぶことが一般的です。
この段階では、TNM分類でM1(遠隔転移陽性)が該当し、がん細胞が肝臓、肺、腹膜、骨などの遠隔臓器に広がっています。
リンパ節転移はN(リンパ節)分類のN1(1-3個)やN2(4個以上)で評価され、ステージⅣではAny N(リンパ節転移の有無問わず)が適用されますが、リンパ節転移は早期に発生しやすく、約25%の症例で遠隔リンパ節(例: 傍大動脈リンパ節)への転移が認められます。
リンパ節転移はリンパ管経由で広がり、予後を悪化させる重要な指標であり、遠隔転移と合併すると中央生存期間を3〜6ヶ月程度に短縮します。
根治手術は原則適応外ですが、孤立性転移の限局例では外科的介入の可能性があり、2025年現在、NALIRIFOXのような新標準化学療法や分子標的療法、光免疫療法の進展により、選択肢が拡大しています。
ステージⅣで行われる主な治療方法
ステージⅣ膵臓がんのリンパ節転移例では、全身化学療法が治療の柱となり、腫瘍縮小と症状緩和を目指します。
2024年にFDA承認されたNALIRIFOXが第一選択の新標準となり、従来のFOLFIRINOXやゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GnP)と比較して中央生存期間を延長します。
リンパ節転移の多発例では、薬剤到達性が良好なリンパ節に効果を発揮しますが、KRAS変異(90%以上)による耐性獲得が課題です。
患者様のPS、年齢、全身状態に応じて選択されます。
| 治療法 | 概要 |
|---|---|
| NALIRIFOX(第一選択) | ナノリポソームイリノテカン+5-FU/レボホリナート+オキサリプラチン。PS 0-1向け。消化器毒性管理が必要。 |
| FOLFIRINOX | 5-FU+レボホリナート+イリノテカン+オキサリプラチン。体力良好者向け。神経障害・骨髄抑制が強い。 |
| ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GnP) | PS 0-2向け。リンパ節転移制御に有効。 |
| ゲムシタビン単独 | 高齢者・PS 3向け。副作用軽減を優先。 |
| 第二選択(NAPOLI-3) | ナノリポソームイリノテカン単剤。耐性例に適用。 |
治療中は白血球減少、吐き気、脱毛、神経障害などの副作用が生じやすいため、G-CSF(好中球増殖因子)や抗吐気薬による管理が重要となります。
リンパ節転移合併例では、分子標的療法を併用し、生存延長を図ります。
リンパ節転移のある場合に直面する課題
ステージⅣのリンパ節転移は、予後をさらに悪化させ、治療の持続性を低下させます。
リンパ節は早期転移部位として知られ、多発転移(N2)で再発リスクが高く、LNR(リンパ節転移比率)が高いほど生存率が低下します。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 再発・耐性のリスク | KRAS変異による化学療法耐性獲得。再発率80%以上。 |
| 治療の持続性 | 副作用蓄積でPS低下。奏効期間2〜6ヶ月。 |
| 全身への影響 | 肝・腎機能障害。リンパ節多発で免疫抑制強化。 |
| 遠隔転移合併 | 肝・肺転移と同時で予後悪化。全身療法優先。 |
これらの課題から、ネオアジュバント療法(術前化学放射線)や標的療法の併用が推奨されます。
生活の質を維持するための支援
治療と並行してQOL維持が不可欠であり、リンパ節転移による倦怠感や痛みを早期管理します。
| 支援内容 | 詳細 |
|---|---|
| 緩和ケア | 痛み・倦怠感管理(オピオイド、ステント)。早期導入でQOL向上。 |
| 栄養サポート | 悪液質対策(経腸栄養、栄養士指導)。体重減少抑制。 |
| 心理的サポート | 不安・抑うつケア(カウンセリング、サポートグループ)。家族支援含む。 |
| リハビリテーション | 運動療法で筋力維持。PS改善。 |
家族の負担軽減のためのACP(事前ケア計画)も重要となります。
選択肢としての光免疫療法
この治療は、がん細胞に集まる特殊な薬剤を体内に投与し、その後、特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊するという仕組みです。
光免疫療法は、がん細胞だけを標的とするため、正常な組織への影響が少ないとされています。
そのため、副作用が比較的軽度で済む可能性があります。
また、化学療法との併用により相乗効果を期待できます。
ただし、適応には一定の条件があり、すべての患者様が対象になるわけではありません。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認頂けます。
まとめ
膵臓がんステージⅣでリンパ節転移がある場合、NALIRIFOXを中心とした化学療法や分子標的療法、当院の光免疫療法などの選択肢により、生存延長とQOL向上が期待できます。
光免疫療法のような選択肢については、医師と相談しながら適応の可否を検討することで、より可能性を広げることができます
当院の光免疫療法の詳細や、適応などについてはお気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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