高齢者でも増加する乳がん
乳がんは、日本人女性のがん罹患率の最も高いがんであり、平均寿命の延長に伴い高齢者の乳がん罹患者数は増加しています。
70代~80代で乳がんに罹る人も増えており、閉経後でも乳がんを発症することがあります。
高齢者の乳がんは、体力や依存疾患、患者様の生活の質を配慮しながら治療法を選択する必要があります。
また、若年性乳がんと進行速度やがんのタイプが異なるため、それらの要素も考慮して治療方針が決定されます。
この記事では、80代女性における乳がんの生存率や治療の選択肢などを解説します。
80代の乳がんの生存率
国立がん研究センターの情報では、年齢階級別死亡率【乳房 2022年】における、人口10万人に対する80~84歳の死亡率(人数)は54.4人、85歳以上は76.2人となっております。
また、ステージⅠ期の5年生存率は、79歳以下で94%を超え、80歳以上は75%である。
ステージⅡ期以上は、年齢に応じて生存時間が短くなる傾向にあった。
ステージⅣ期では、年齢による差は見られなかった、という統計も発表されています。
このことから、80代の生存率は79歳以下と比較すると低くなっていることが分かります。
高齢者は他の健康問題を抱えている可能性が高く、これらの問題が乳がんの生存率などに影響を与えているとも考えられます。
高齢者の乳がんの特徴と課題
高齢者の乳がんは、若年性乳がんと比べて進行が遅く、ホルモン受容体陽性である乳がんが多いです。
また、心疾患や腎不全、糖尿病、骨粗鬆症といった乳がん以外の疾患を抱えていることが多く、これらの依存疾患によって治療法が制限されることがあります。
進行度や健康状態を考慮して治療を行う必要があるため、手術や化学療法といった治療法はリスクが増加する可能性があります。
その他にも、高齢者は化学療法や放射線療法による副作用に対して敏感なため、生活の質を維持しながら高い治療効果を出すことが課題となります。
治療の選択肢と生存率
80代の乳がん治療の選択肢は、一般的な乳がんと特別な違いはありませんが、個々の患者の健康状態や生活の質を考慮して組み合わせる必要があります。
治療の主な選択肢としては、手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法などがあります。
●手術
手術は乳がん治療における最も一般的な治療法ですが、高齢者には手術のリスクと回復能力を考慮して適応する必要があります。
高齢者であっても、乳房温存術と乳房切除術のどちらかを腫瘍の大きさや再発リスクによって選択します。
●放射線療法
放射線療法は、基本的に乳房温存術後に局所再発を防ぐために行われます。
しかし、80歳以上の高齢者においては、体への負担を考慮し、放射線療法を省略して手術のみで治療を行うことがあります。
●化学療法
化学療法は高齢者の乳がんに対して有効ですが、若年女性よりも骨髄抑制、心毒性、感染症といった副作用が深刻になる可能性があります。
そのため、高齢者の乳がん治療では、化学療法を省略することがあります。
●ホルモン療法
高齢者の乳がんにはホルモン受容体陽性の乳がんが多いため、ホルモン療法は多く使用されます。
また、手術や化学療法を適用できなかった場合の選択肢としも、ホルモン療法が選択されることが多いです。
光免疫療法と乳がん
80代乳がん治療の選択肢として光免疫療法が挙げられます。
光免疫療法は、特定の波長の光を用いてがん細胞を選択的に攻撃する治療法です。
この治療法は、健康な細胞へのダメージを抑えつつ、がん細胞を選択的に攻撃することが可能です。
また、副作用が少ない点が利点の一つに挙げられます。
80代の患者様は副作用に敏感な体となっているため、光免疫療法が適している可能性があります。
光免疫療法が適用できるかどうかは、がんの種類や進行状況、患者様の体調などによります。
以下より当該治療に関する詳細をご確認頂けます。
まとめ
80代の女性における乳がんの生存率は、79歳以下と比べると低くなっている。
高齢者の乳がん治療には、治療効果だけでなく健康状態や依存疾患を考慮に入れる必要がある。
治療効果と体への負担や副作用のバランスを取る必要があり、治療法の組み合わせは個別化されるべきである。
光免疫療法は副作用が少ない治療法のため、80代の女性の乳がん治療への適用も期待できる。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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