膀胱がんの進行と肺転移
膀胱がんは、尿路上皮に発生する悪性腫瘍であり、高齢の男性に多くみられます。
がんが進行すると、リンパ節や骨、肝臓、肺などの臓器に転移することがあり、ステージ4とは遠隔転移が確認された状態を指します。
肺転移は、膀胱がんのがん細胞が血液やリンパの流れを通じて肺に到達し、新たな腫瘍を形成する状態とされています。
肺転移があっても無症状のことがありますが、以下のような症状が現れる場合もあります。
主な症状 | 内容 |
---|---|
慢性的な咳 | がんによる気道刺激によるものです。 |
呼吸困難 | 肺の機能が低下したり、胸水の影響がある場合です。 |
胸痛 | 肺や胸膜への浸潤によって引き起こされることがあります。 |
血痰 | 気道にがんが関与し出血する場合にみられます。 |
これらの症状は、他の肺疾患と区別が難しい場合があるため、CTやPET検査、腫瘍マーカーなどを併用して診断が行われます。
治療の基本方針と選択肢
ステージ4の膀胱がんで肺転移が確認された場合、根治を目指す治療が難しいこともありますが、治療の目的は病状の進行を抑え、症状を軽減し、生活の質(QOL)を保つことです。
標準治療には、以下のような選択肢があります。
治療法 | 特徴 |
---|---|
化学療法 | シスプラチンやゲムシタビンなどを使用し、全身的に作用します。 |
免疫療法 | オプジーボ(ニボルマブ)やアテゾリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬を使用します。 |
分子標的治療 | FGFR遺伝子変異を対象とした薬剤(例:エルダフィチニブ)を用いる場合があります。 |
放射線療法 | 症状緩和を目的に、肺の病変に局所照射を行うことがあります。 |
緩和ケア | 治療が難しい場合に、痛みや不安をやわらげることを目的とします。 |
これらの治療法は、患者様の全身状態、副作用の耐性、合併症の有無などを総合的に考慮したうえで選択されます。
選択肢としての光免疫療法
一部の医療機関では、治療選択肢のひとつとして光免疫療法を導入している場合もあります。
この治療は、がん細胞に集まりやすい性質を持つ薬剤と、特定の光を組み合わせることで、選択的にがん細胞へ作用させることを目的としています。
正常な組織への影響を抑えながら、がん細胞のみに効果を届けることが期待されています。
ただし、すべての患者様に適応されるわけではなく、対応している医療機関も限られているため、詳しくは医師にご相談いただくことが推奨されます。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
治療方針を選ぶために大切なこと
肺転移のある膀胱がんにおいては、治療の選択肢が複数ありますが、その選定には医師との信頼関係と対話が欠かせません。
体力、年齢、副作用への耐性、既往歴、生活スタイルなど、さまざまな要素を総合的に考慮し、患者様とご家族の希望を尊重しながら方針が決められます。
セカンドオピニオンを活用して、治療の選択肢を広げることも可能です。
また、治療を通じて少しでも安心して生活できるよう、サポート体制が整った医療機関の利用も検討されるとよいでしょう。
再発や転移があったとしても、苦痛の軽減や生活の質の向上を目指す取り組みは可能であり、希望を持って過ごせる時間を支える医療が求められています。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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