肺がんの抗がん剤治療とその進展「光免疫療法との併用を中心に」

肺がんにおける抗がん剤治療の基本と進化

抗がん剤治療の位置づけ

肺がんは早期発見が難しいことが多く、診断時には進行・転移を伴うケースがあります。そのため、抗がん剤治療は手術が困難な進行・再発病態でも生命予後を改善する中心的な治療法です。抗がん剤はがん細胞の増殖を抑えるために作用し、化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など複数の系統があります。

化学療法の役割

歴史的に、肺がんに対する第一の薬物治療は化学療法でした。プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン)を基盤とした併用レジメンは、多くの非小細胞肺がん(NSCLC)患者で標準治療として用いられています。これらはがん細胞のDNA合成を阻害し、細胞死を誘導する効果を持ちます。

小細胞肺がん(SCLC)では、カルボプラチン+エトポシドといったレジメンが奏効率の高い治療として用いられ、再発・進行例でも有効性が確認されています。

分子標的薬と個別化治療

ドライバー変異に対応する治療

肺がんの治療は近年、がん細胞の遺伝子変異に基づく「個別化医療」に大きくシフトしています。EGFR、ALK、ROS1、BRAF、METなどのドライバー変異を有する患者では、それぞれに対応した分子標的薬によって高い奏効率を示します。

  • EGFR変異陽性例:オシメルチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬。
  • ALK融合陽性例:アレクチニブ、ロルラチニブなどのALK阻害薬。
  • ROS1融合陽性例:クリゾチニブなどのROS1阻害薬。

これらの薬剤は標準化学療法に比べて副作用が比較的軽度であり、患者のQOLを保ちながら長期生存を可能にする方向へと治療戦略を変えています。

免疫チェックポイント阻害薬とがん免疫療法

免疫療法の基本原理

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、がん細胞に対する免疫応答を制御しているPD-1/PD-L1経路をブロックし、免疫細胞ががんを攻撃しやすくする治療法です。ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)は肺がん治療で代表的なICIであり、単剤または化学療法との併用で効果を発揮します。

免疫療法の効果と限界

ICIはPD-L1発現率が高い腫瘍で特に効果が高いですが、全患者に均一に効果があるわけではありません。また、免疫関連副作用(皮疹、腸炎、甲状腺機能異常など)の管理が必要となるため、慎重なモニタリングが不可欠です。

抗がん剤治療の課題と次世代戦略

耐性獲得と治療効果の限界

抗がん剤では一定期間効果が出ても、やがて耐性が獲得される問題があり、治療効果の持続が困難になる場合があります。これは分子標的薬でも同様で、二次耐性変異によって効果が弱まることがあります。

こうした耐性を克服するため、耐性機序に応じた薬剤変更や併用療法など柔軟な治療戦略が必要です。

光免疫療法の概要と応用可能性

動作メカニズム

光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積する薬剤(例:ICG誘導体)を投与し、その後近赤外線レーザーを照射することで活性酸素を発生させ、がん細胞のみを破壊する治療法です。正常組織へのダメージが少なく、抗腫瘍免疫を刺激することも報告されています。

肺がんへの適用可能性

現時点では頭頸部がんを中心に保険適用がありますが、肺がんに対しても自由診療として臨床応用が進んでいます。特に難治性の局所進行例や転移例、抗がん剤単独ではコントロールが難しい病変に対して有効性が期待されています。

抗がん剤治療との併用戦略

光免疫療法は、標準治療である化学療法・分子標的薬・免疫療法と併用することで、腫瘍負荷の軽減と免疫系の活性化を同時に狙える点が注目されています。標準治療で縮小しきれない病変や耐性獲得時の新規戦略として有望です。

また、光免疫療法は外来で完結可能なことが多く、通院負担を軽減しつつ治療効果を狙うことができます。

具体的な併用治療の臨床例と考察

分子標的薬+光免疫療法の例

EGFR変異陽性の肺がん患者で、オシメルチニブ治療中に耐性が出現した場合、その病変に対して光免疫療法を併用することで局所腫瘍コントロールの改善が期待されます。こうしたアプローチは、耐性病変を局所的に叩きながら全身治療を継続する新たな戦略として注目を集めています。

免疫療法+光免疫療法の相乗効果

免疫チェックポイント阻害薬と光免疫療法を併用することで、局所腫瘍破壊後に誘導される免疫応答を強化し、全身の微小転移巣に対しても免疫反応を促す可能性があります。これは「免疫ブースト戦略」として研究が進んでいます。

副作用マネジメントと治療の継続性

抗がん剤治療では、吐き気・骨髄抑制・末梢神経障害などの副作用がありますが、光免疫療法との併用では重篤な免疫関連副作用が出現しにくいという利点があります。ただし、光照射による局所反応(発赤・熱感など)はあるため、適切な支持療法が必要です。

まとめと今後の展望

肺がんの抗がん剤治療は化学療法から分子標的薬、免疫療法へと進化し、患者ごとの遺伝子プロファイルに応じた個別化医療が実現しつつあります。
これらの標準治療に加えて、光免疫療法のような新しい治療アプローチを融合させることで、これまで治療困難だった症例に対しても有効性を発揮する可能性が広がっています。
治療選択肢は今後さらに増え、患者のQOLを維持しながら延命効果を高める戦略が求められています。

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