卵巣胚細胞腫瘍の全面的理解「診断から治療までの詳細なガイド」

卵巣胚細胞腫瘍の基本情報

非常に稀な卵巣胚細胞腫瘍

卵巣胚細胞腫瘍は、卵巣の胚細胞(卵細胞)から悪性(がん)細胞ができる稀な疾患です。
通常、10代や20代の若年女性に現れ、ほとんどの場合が片方の卵巣のみに発生します。
2019年の日本産科婦人科学会の患者年報では、悪性卵巣胚細胞腫瘍は216例で、全悪性卵巣腫瘍の2.8%であったが、小児期の診断・治療例は含まれていないため、全数把握が難しいと発表されています。
また、卵巣胚細胞腫瘍は、未熟奇形腫、未分化胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍など異なる種類のがんの総称となります。

卵巣胚細胞腫瘍の原因

卵巣胚細胞腫瘍の原因は詳しく解明されていませんが、一つの要因ではなく複数の要素が絡み合って発症するといわれています。

遺伝的要因

卵巣胚細胞腫瘍は、遺伝子変異や染色体の構造異常によって発症リスクが高まると考えられています。
X染色体の数的・構造的な異常は、卵巣胚細胞腫瘍の発症リスクを上げる要因の一つとなります。

環境要因

環境要因も卵巣胚細胞腫瘍の発症に影響を与えています。
母体(母親)の喫煙、放射線被ばく、生活習慣によるホルモンバランスの乱れ、化学物質への長期間の暴露などが挙げられます。

免疫異常

免疫系の機能不全も、卵巣胚細胞腫瘍の発症リスクを上げるといわれています。
通常は体内で免疫系が異常な細胞を認識し排除していますが、異常が起こると腫瘍細胞の増殖を起こしてしまいます。

ホルモンバランスの乱れ

体内の女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が異常に多い状態が継続したり、男性ホルモン(アンドロゲン)の受容体に異常があるとリスクが高まります。

その他の要因

その他にも、何らかの原因で胎児期に細胞の移動や分化の過程で異常があると、将来腫瘍化するリスクが高まります。

症状

卵巣胚細胞腫瘍の症状は、腫瘍の種類によって異なりますが、腹部膨満感、下腹部痛、不正出血が主なものとなります。
未熟奇形腫は、様々な組織成分を含む複雑な腫瘍であるため、症状も多岐に渡ります。
腹部腫脹および疼痛、便秘・頻尿、発熱や倦怠感、月経異常などが未熟奇形腫の代表的な症状です。
未分化胚細胞腫では、片側の下腹部痛や腹部の膨満感が代表的な症状となります。
卵黄嚢腫瘍では、急性の腹部膨満感や下腹部痛、その他にも不正出血などが症状となります。
上記の症状は、他の婦人科疾患と似ているため見過ごされやすいですが、症状が長期化する場合には婦人科を受診してください。

診断

卵巣胚細胞腫瘍の診断は、内診、超音波検査・CT・MRIなどの画像診断、腫瘍マーカーの血液検査によって行われます。
腫瘍マーカーは、AFP(アルファフェトプロテイン)やβ-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット)などが利用されます。
確定診断は、手術で摘出した腫瘍の組織を顕微鏡で観察し、腫瘍の種類や悪性度を判定します。
その際に、遺伝子検査なども一緒に行います。

治療方法

卵巣胚細胞腫瘍の治療は、手術や化学療法、放射線療法などを組み合わせて行います。
また、卵巣胚細胞腫瘍は若年女性に多く発症するため、進行期に関わらず妊孕性温存治療を考慮すべき点が、通常の悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)とは異なります。
手術は、腫瘍を完全に取り除くことが目的であり、早期のステージであれば、片側の卵巣だけを摘出する方法(片側卵巣摘出術)も選択されます。
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したり、細胞分裂を妨害することで、がんの増殖を阻止する治療法です。
全身化学療法や局所化学療法など、実施方法はがんの種類と進行度に応じて異なります。
放射線療法は、特定の種類の胚細胞腫瘍や、化学療法後に残った腫瘍に対して用いられる治療法です。

治療における副作用

卵巣胚細胞腫瘍の治療は、複数の治療法を組み合わせて行うため、それぞれの副作用やリスクが伴います。
手術では、痛みや出血、傷口の化膿、妊娠ができなくなるといった副作用やリスクがあります。
化学療法は、吐き気や嘔吐、髪の脱毛、白血球減少、貧血、手足の痺れなどの副作用が起こる可能性があります。
放射線療法は、皮膚の赤み、倦怠感、照射した臓器の炎症、妊娠が難しくなる、別のがんが発生するといった副作用やリスクが挙げられます。

光免疫療法と卵巣胚細胞腫瘍

光免疫療法とは、腫瘍組織に選択的に集積する光感受性薬剤を用い、特定の波長の光を照射することで腫瘍細胞を破壊する治療法です。
この治療法は、周囲の正常な組織への影響を抑えることが可能です。
光免疫療法によって、卵巣胚細胞腫瘍を含む多くのがん種に対して有効性が期待されています。
また、この治療法の適用により、副作用のリスクを低減しつつ効果的な治療が可能となる見込みです。
光免疫療法の詳細については以下よりご確認いただけます。

まとめ

卵巣胚細胞腫瘍は、卵巣の胚細胞からがん細胞ができる稀な疾患です。
多くの場合が若年女性に発症し、未分化胚細胞腫を代表とする異なる種類のがんの総称となります。
複数の要素が絡み合って発生すると考えられており、完全な予防は難しいとされています。
卵巣胚細胞腫瘍の治療は、基本的に手術、化学療法、放射線療法の組み合わせて行われます。
光免疫療法は、卵巣胚細胞腫瘍に対して有効な治療となる可能性があります。
標準治療で有効な治療法が無い患者様は、一度当院までご相談ください。

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