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膵臓がんの肺転移(ステージⅣ)に関する治療の選択肢
膵臓がんは診断時の半数以上がステージⅣ(遠隔転移あり)の進行がんであるといわれており、発見が遅れやすく、転移が広範に及ぶことが一般的です。
特に肺転移は、ステージⅣの約20-25%で認められ、がん細胞が血行性またはリンパ行性に肺に到達・定着した状態を指します。
肺転移は単独で発生する場合もありますが、肝転移や腹膜播種と同時進行することが多く、予後は厳しく、中央生存期間は全体で6〜12ヶ月程度とされています。
ただし、孤立性肺転移(他の臓器転移なし)の場合、肝転移のみの症例より相対的に良好な生存率を示す報告もあります。
この段階では根治手術は原則適応外となり、全身療法を中心とした治療戦略が求められ、腫瘍負荷の軽減とQOL(生活の質)維持が主な目標となります。
2025年現在、NALIRIFOXのような新標準化学療法や分子標的療法の進展により、治療選択肢が拡大しています。
当院では、これらの標準治療に加え、光免疫療法などの先進治療を組み合わせ、患者様の状態に最適化したアプローチを提供しています。
肺転移による主な症状と影響
肺転移は初期段階では無症状で画像検査で偶然発見されることが多く、進行すると肺機能の低下や腫瘍による局所圧迫が症状を引き起こします。
これらの症状は呼吸器系に特異的で、全身状態の悪化を加速させるため、早期管理が重要です。
| 症状 | 内容 |
|---|---|
| 咳(乾性または湿性) | 腫瘍による気道刺激や炎症で持続的な咳嗽が発生。夜間や体位変換時に悪化しやすい。 |
| 血痰(喀血) | 腫瘍の血管侵襲や壊死により痰に血が混入。大量喀血は緊急対応を要する。 |
| 息切れ(呼吸困難) | 肺実質の置換や胸水蓄積により換気障害が生じる。 |
| 胸痛・胸部不快感 | 腫瘍の胸膜浸潤や肋骨圧迫による。鋭痛や鈍痛として感じられる。 |
| その他(胸水・気胸) | 多発転移で胸水を伴い、呼吸不全を招く可能性あり。 |
これらの症状は、肺転移の進行度や合併症(例: 胸水、感染)により重症化し、化学療法の忍容性を低下させるため、支持療法が並行して必要となります。
診断の進め方
ステージⅣ膵臓がんの肺転移診断は、原発巣の病歴と画像所見を基に多角的に行われます。
主にCTやPET-CTが第一選択で、病変の性質を区別します。
病理診断は必須ではなく、臨床経過で判断される場合が多いですが、孤立性結節では生検が検討されます。
| 検査方法 | 内容 |
|---|---|
| 胸部CT(造影) | 肺結節の大きさ・数・分布を評価する。低吸収結節や多発性で転移を疑う。薄スライスで微小病変検出可能。 |
| PET-CT(FDG) | 転移巣の代謝活性を可視化する。原発巣との一致で診断精度向上。ステージングに有用。 |
| 気管支鏡・EBUS(内視鏡超音波) | 中心性病変の生検に適応。リンパ節評価も同時可能。 |
| 腫瘍マーカー(CA19-9, CEA) | 病勢モニタリングに補助。肺転移進行で上昇傾向を示す。 |
| 肺機能検査 | 症状評価と治療耐性予測に用いる。 |
診断確定後、腫瘍内科、呼吸器科、放射線科などで連携して治療方針を議論します。
分子プロファイリング(NGS)も並行し、標的療法の適応を探ります。
標準治療の選択肢と限界
ステージⅣ肺転移例では、遠隔転移のため手術は原則適応外です。
主な治療は全身化学療法で、腫瘍縮小と症状緩和を目指します。
NALIRIFOXが第一選択の新標準となり、従来療法より生存延長効果が確認されています。
ただし、肺転移は薬剤到達性が比較的良好ですが、KRAS変異(90%以上)による耐性獲得が課題です。
限界として、奏効率は20-40%程度で、肺転移多発例では進行抑制が不十分です。
また、副作用による減量・中止が頻発し、全体生存率は5年で2~5%という報告もあります。
当院では、これらの限界を補うため、光免疫療法との併用を提案します。
治療選択の課題と新興アプローチ
肺転移をした膵臓がんステージⅣでは、以下の課題が治療を複雑化します。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 薬剤耐性とTME影響 | KRAS変異と免疫抑制性腫瘍微小環境(TME)が化学療法効果を低下。 |
| 多臓器転移の合併 | 肺+肝転移で予後悪化。全身療法の優先順位付けが難しい。 |
| 副作用とQOL低下 | 呼吸症状悪化で治療継続困難。高齢者で顕著。 |
| 分子標的の限定的適応 | BRCA変異(5-7%)やMSI-H(1-2%)のみ標的療法可能。 |
肺転移の孤立例では外科切除の報告もあり、生存延長に寄与します。
選択肢としての光免疫療法
当院の光免疫療法は、標準治療が困難な肺転移例に有効な局所治療となり得ます。
光感受性物質を投与後、特定の波長のレーザー光を照射し、がん細胞を選択的に破壊します。
副作用は軽微であり、化学療法との併用により相乗効果を期待できます。
設立6年の実績を基に、がんの部位・大きさに合わせた最適な薬剤・照射方法を選択し、QOLを維持しながら治療を進めます。
以下より、当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
まとめ
膵臓がんステージⅣ肺転移は予後が厳しいものの、NALIRIFOXを中心とした化学療法や分子標的療法、当院の光免疫療法などの選択肢により、生存延長と症状緩和が期待できます。
患者様のPS、転移パターン、分子プロファイルを評価し、多職種で個別化治療を推進してください。
早期相談で最適方針を共に探り、QOLを最大化するアプローチが鍵となります。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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