膵臓がんのステージ3の定義
局所の広がり
膵臓がんがステージ3に進行すると、膵臓の境界を越えて、通常は近くのリンパ節や隣接する組織にがん細胞が広がっています。
これは局所浸潤と呼ばれ、がんの影響が膵臓だけでなくその周囲にも及んでいることを示しています。
遠隔転移の不在
ステージ3では、まだがんが遠隔の臓器や他の部位に転移していないことが特徴です。
この段階では、がんは主に局所的な範囲に制限されており、全身への広がりが確認されていません。
検査手段
ステージの確定は、画像検査(CTスキャン、MRIなど)や生検などの診断手段を通じて行われます。
これらの検査により、膵臓がんの広がりや影響の程度が評価され、ステージ3と診断されるかどうかが決定されます。
症状の進展
ステージ3に進行すると、症状が進行して現れることが一般的です。
腹痛、体重減少、食欲不振、黄疸(黄色くなった皮膚や目)などがより顕著になり、がんの進行が身体全体に影響を及ぼしています。
治療の複雑性
ステージ3の膵臓がんの治療は、通常、複数のアプローチを組み合わせることが必要です。
手術、放射線療法、化学療法、および免疫療法などが考慮され、患者の個々の状態に基づいて治療計画が立てられます。
ステージ3の膵臓がんは、がんが局所的に拡がっており、まだ遠隔転移が見られないという点で治療の余地がある一方で、局所制御が難しく再発のリスクが高まることが特徴です。
医師との密な協力により、最適な治療計画を立てることが重要です。
症状
初期症状の不明瞭性
膵臓がんの初期症状は一般的にはっきりとせず、他の疾患と混同されることがあります。
これには慢性的な腹痛、体重減少、消化不良、一般的な倦怠感などが含まれます。
患者はこれらの症状を無視することがあり、がんが進行するまで診断が難しい場合があります。
腹痛
ステージ3に進行すると、膵臓がんによる腹痛がより強くなり、持続的かつ局所的なものになります。
これはがんが膵臓から周辺組織に広がり、神経に影響を及ぼすためです。
膵臓がんの腹痛はしばしば背部にも広がります。
体重減少
膵臓がんの進行とともに、患者は体重を急激に失うことがあります。
これはがんが栄養吸収を妨げ、消化器系に影響を与えるためです。
食欲不振や嘔吐も関連する症状です。
食欲不振
膵臓がんは、食欲を減退させることがあります。
がんが膵臓から周辺組織に広がると、消化酵素の正常な分泌が妨げられ、これが食事の消化や吸収に影響を与え、食欲不振を引き起こす要因となります。
黄疸
膵臓がんが進行すると、胆汁管が圧迫されることがあり、これによって黄疸が引き起こされます。
黄疸は皮膚や白目が黄色く変色する症状であり、胆汁が正常に体外に排泄されないことが原因です。
これは膵臓がんが胆道系統に影響を与えている典型的なサインの一つです。
膵臓がんの症状は患者によって異なり、また進行度合いによっても変動します。
これらの症状が見られた場合、早期の診断と治療が重要です。
医師との相談により、適切な検査や治療が行われるべきです。
診断
画像検査
CTスキャン(Computed Tomography): CTスキャンはX線を使用して体内の断層像を作成する画像検査です。
ステージ3の膵臓がんの評価において、膵臓の形状や大きさ、がんの拡がり、周辺組織への影響が観察されます。
また、リンパ節や血管の状態も確認されます。
MRI(Magnetic Resonance Imaging)
MRIは磁場とラジオ波を使用して詳細な内部組織の画像を提供する検査です。
CTスキャンと同様に、がんの位置や拡がり、周辺組織の状態を調べるのに有用です。
MRIは特に軟部組織の評価に優れています。
生検
穿刺生検
膵臓がんの診断においては、通常は穿刺生検が行われます。
これは、膵臓に針を挿入し、細胞や組織のサンプルを取得するプロセスです。
得られたサンプルは顕微鏡で詳細に観察され、がんの種類や進行度合いを確認するのに役立ちます。
内視鏡的超音波ガイド生検(EUS-FNA)
内視鏡を使用して膵臓に近い領域にアクセスし、超音波を利用してがんの位置を確認しつつ、同時に穿刺生検を行います。
この手法は高い精度で生検を行うことが可能であり、診断において重要な情報を提供します。
血液検査
腫瘍マーカーの検査: 血液中の特定の腫瘍マーカー(例:CA19-9)のレベルを測定することが行われることがあります。
これはがんの活動や進行状況を示す手がかりとなることがありますが、正確な診断のためには他の検査と組み合わせる必要があります。
これらの検査手法の組み合わせにより、医師は膵臓がんのステージ3に関する詳細な情報を得ることができます。
これが患者の治療計画の立案や予後の評価に役立ちます。
治療法
手術
膵頭十二指腸切除(Whipple手術)
ステージ3の場合、膵臓がんがまだ局所的で手術が可能な範囲にある場合、Whipple手術が検討されることがあります。
この手術では、膵臓の一部、胃、十二指腸、胆管、およびその他の周辺組織が摘出されます。
部分的な膵臓摘出
膵臓の一部ががんに影響を受けている場合、その部分だけを切り取る手術も行われることがあります。
放射線療法
外部照射療法
がんの局所的な制御を目指して、外部から高エネルギーのX線を照射する手法です。
手術後に残存したがん細胞の除去や、がんの縮小を目指すために使用されることがあります。
化学療法
経口または静脈内薬物投与
化学療法ではがん細胞を殺すまたは成長を遅らせる薬物が使用されます。
ステージ3の膵臓がんにおいては、手術前や手術後、あるいは放射線療法と併用して行われることがあります。
光免疫療法
光免疫療法は、特定の薬剤と光を組み合わせてがん細胞を攻撃する治療法です。
薬剤はがん細胞に選択的に集積し、その後特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊する仕組みとなっています。
この治療法は、副作用が少なく、患者様の負担を軽減することが期待されています。
光免疫療法は、他の治療法と組み合わせて使用されることもあり、相乗効果が期待出来ます。
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対症療法
疼痛管理
膵臓がんはしばしば腹痛を引き起こすため、痛みを軽減するための薬物療法や神経ブロックが行われることがあります。
栄養補助
ステージ3の膵臓がん患者は体重減少や食欲不振が見られることがあり、栄養補助が行われることがあります。
治療計画は患者の総合的な健康状態やがんの特性、および患者が受け入れ可能な治療の範囲に基づいて決定されます。
複数の治療法が組み合わせられることがあり、治療の進捗をモニタリングしながら調整されます。
医師との協力が不可欠であり、患者にとって適切の治療法を見つけるためには継続的な対話が重要です。
予後
治療の影響
手術の適用
ステージ3の膵臓がんでは、完全に摘出できない場合が多いため、手術が難しい場合があります。
手術が行われた場合でも、がんが周辺組織やリンパ節に広がっていることが一般的であり、これが再発のリスクを増大させます。
放射線療法と化学療法の効果
放射線療法や化学療法はがんの進行を抑制するために使用されますが、これらの治療が完全にがんを制御できるかどうかはケースバイケースで異なります。
また、これらの治療が引き起こす副作用も患者の健康状態に影響を与えます。
再発のリスク
局所再発と遠隔再発
ステージ3の膵臓がんでは、局所再発(膵臓や周辺組織で再発)や遠隔再発(他の臓器や部位で再発)のリスクが高まります。
がん細胞が既知の領域を超えて広がっているため、完全に制御することが難しくなります。
患者の一般的な健康状態
栄養状態や体力
ステージ3の膵臓がん患者はしばしば栄養状態が悪化し、体力が低下することがあります。
これは治療への応答や生存期間に影響を与える可能性があります。
共存疾患や合併症
他の疾患や合併症がある場合、治療への耐性や予後にも影響を与えることがあります。
個別のがんの特性
がんの分子生物学
膵臓がんは分子生物学的に多様であり、がんの種類や特定の遺伝子変異が治療効果や予後に影響を与えることがあります。
分子診断や遺伝子解析が進展する中、これらの情報を活用した治療戦略が検討されています。
経過観察とサポートケア
定期的なフォローアップ
ステージ3の膵臓がんの患者は、治療後も定期的なフォローアップが必要です。
これにより再発や治療関連の合併症が早期に検出され、適切な対応が行われます。
サポートケア
がん治療は体に負担をかけることがあり、症状や生活の質に影響を与える可能性があります。
サポートケアは症状の管理、精神的なサポート、栄養補助など、患者が治療を受けつつ快適な生活を送るために提供されます。
予後は患者の個々の状態や治療応答に大きく依存するため、適切な医療チームとの協力が不可欠です。
患者と家族にとっても理解可能な情報を提供し、希望とともに適切な治療方針を見つけることが重要です。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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