前立腺がんとは
前立腺がんは、男性の前立腺に発生する悪性腫瘍で、高齢者に多くみられます。
初期には症状がほとんどないこともあり、PSA(前立腺特異抗原)の血中濃度検査によって発見されるケースも多くなっています。
進行すると、排尿障害や血尿、骨転移による痛みが出現することもあります。
ステージ4と副腎転移の意味
ステージ4とは、がんが前立腺を越えて周囲組織や他の臓器へ拡がり、遠隔転移が認められる状態です。
骨、リンパ節、肺、肝臓への転移が比較的多く、副腎への転移はやや稀な部位とされています。
副腎は腎臓の上にある内分泌器官で、ホルモン分泌に関与しています。
副腎転移がある場合、血行性にがん細胞が全身へ拡がっている可能性を示唆しており、より進行した病態と考えられます。
副腎転移でみられる症状
副腎転移は、自覚症状が出ないこともありますが、腫瘍が大きくなることで症状が現れる場合もあります。
主な症状 | 内容 |
---|---|
腹部や背部の痛み | 副腎が腫大して周囲を圧迫することで痛みが出る場合があります。 |
倦怠感 | 全身状態の悪化やホルモン分泌の変化により倦怠感が出ることがあります。 |
ホルモン異常症状 | 副腎の機能に影響が出ることで、稀にホルモン異常がみられる場合があります。 |
副腎転移の診断方法
副腎転移が疑われる場合、画像検査を中心に評価が行われます。
検査方法 | 内容・目的 |
---|---|
CT検査 | 副腎の形や大きさ、腫瘍の存在を確認します。 |
MRI検査 | 腫瘍の質的評価を行うために有効です。 |
PET-CT | 全身のがんの広がりを評価し、他の転移部位も同時に把握できます。 |
副腎生検 | 腫瘍の正体を確定するために行われることがありますが、リスクを伴うため慎重に判断されます。 |
標準治療の考え方
ステージ4の前立腺がんでは、全身に対する治療が基本となります。
副腎転移がある場合も、以下のような治療法が検討されることがあります。
治療法 | 概要 |
---|---|
ホルモン療法(ADT) | 男性ホルモンの分泌を抑えることで、がんの進行を抑制する治療です。 |
化学療法 | ドセタキセルなどの薬剤を用いて、全身のがん細胞に作用する治療です。 |
アンドロゲン受容体阻害薬 | エンザルタミドやアビラテロンなど、ホルモン療法を補完する内服薬です。 |
緩和的放射線治療 | 骨転移による痛みなどを軽減するために用いられます。 |
これらの治療は、患者様の全身状態や希望、既往歴を踏まえて適切に選択されることが重要です。
副腎自体に対する外科的手術は、転移が多発している場合には適応外とされることが多いです。
生活支援と心理的ケア
副腎転移を伴うステージ4のがんでは、身体面だけでなく心理面への支援も求められます。
QOL(生活の質)を保つために、以下のような取り組みが行われています。
支援内容 | 具体的な支援 |
---|---|
疼痛管理 | がん性疼痛に対する薬物療法や緩和ケアの導入。 |
栄養サポート | 食欲低下や体重減少に対して、栄養士による食事指導を行います。 |
精神的ケア | 不安や抑うつに対するカウンセリングや精神科医との連携。 |
家族支援 | 在宅介護に関する情報提供や介護者支援の制度活用。 |
選択肢としての光免疫療法
一部の医療機関では、治療選択肢のひとつとして光免疫療法を導入している場合もあります。
この治療は、がん細胞に集まりやすい性質を持つ薬剤と、特定の光を組み合わせることで、選択的にがん細胞へ作用させることを目的としています。
正常な組織への影響を抑えながら、がん細胞のみに効果を届けることが期待されています。
ただし、すべての患者様に適応されるわけではなく、対応している医療機関も限られているため、詳しくは医師にご相談いただくことが推奨されます。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
まとめ
前立腺がん(ステージ4)で副腎転移が確認された場合、全身的な病態の一部と捉えられ、治療の中心は全身療法になります。
ホルモン療法、化学療法、支持療法などを組み合わせながら、個々の状態に応じた治療が進められます。
治療の過程では、生活の質や心の安定を支えるためのサポートも重要です。
光免疫療法のような選択肢が一部で検討されることもありますが、すべての患者様に適しているわけではなく、慎重な判断が必要です。
患者様とご家族が希望を持ち、信頼できる医療者と共に最適な方針を模索していくことが大切です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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