末期の肺がんと光免疫療法の詳細解説
肺がんの基本情報と成因(EGFR、ALK、KRASなど)
肺がんは日本人のがん関連死亡原因の第1位を占める深刻な疾患であり、特に中高年層の喫煙歴のある男性に多くみられます。ただし、非喫煙者や女性にも発症することがあり、生活習慣や環境因子だけでなく、遺伝的要因や体質も重要視されています。
肺がんは大きく非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)に分かれ、NSCLCは約80〜85%を占めます。さらにNSCLCは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分類されますが、近年では腺がんの割合が増加傾向にあります。
肺がんの治療選択において、ドライバー遺伝子の同定は極めて重要です。現在までに特定されている主な遺伝子変異は以下の通りです。
- EGFR(上皮成長因子受容体)変異:特に日本人女性の非喫煙者に多く、エクソン19欠失やL858R変異が代表的で、EGFR-TKI(オシメルチニブなど)が高い奏効率を示します。
- ALK融合遺伝子:EML4-ALKなどが知られており、20〜40代の非喫煙者に多く、クリゾチニブやアレクチニブなどのALK阻害薬が有効です。
- KRAS変異:欧米では肺がんの30%近くに見られる代表的な変異で、日本では10〜15%程度です。特にG12C変異に対しては近年、KRAS阻害薬(ソトラシブなど)が登場しています。
他にも、ROS1融合遺伝子、BRAF変異、METエクソン14スキッピング、RET融合、HER2変異、NTRK融合などが確認されており、次世代シーケンス(NGS)による網羅的検査が標準的に実施されるようになっています。
これらの知見をもとに、患者ごとの「がんの顔つき」に合わせた個別化医療(プレシジョンメディシン)が進んでおり、標準治療と自由診療の組み合わせによる戦略的な治療が今後ますます重要になります。
ステージⅣの進行様式と症状(骨転移、脳転移、胸水など)
肺がんのステージⅣ(末期)とは、がん細胞が肺を超えて他臓器へ転移している状態を指し、TNM分類ではM1(遠隔転移あり)に該当します。発見時にすでにステージⅣであるケースは全体の約40〜50%に及び、初期段階での自覚症状が乏しいため、検診や偶発的な画像検査が発見のきっかけになることも少なくありません。
進行肺がんでは、転移先によって症状が大きく異なり、QOLの著しい低下を招きます。主な進行様式とそれぞれの症状は以下の通りです。
- 骨転移:腰椎や大腿骨などの加重部位に多く、持続的な疼痛や病的骨折、脊髄圧迫による麻痺を起こすことがあります。
- 脳転移:小脳・大脳に多く、頭痛、意識障害、けいれん、言語障害、視野障害などの神経症状が出現します。放射線治療やステロイドの使用が検討されます。
- 胸膜播種・胸水貯留:胸水が肺の膨張を妨げ、進行すると強い呼吸困難、動作時の息切れを引き起こします。胸水穿刺やドレナージ、胸膜癒着術などが必要になる場合があります。
- 肝転移・副腎転移:倦怠感や肝機能障害、ホルモンバランスの変調などを生じることがあります。
また、原発巣の進展により、気道閉塞による喘鳴・咳嗽、出血による血痰、上大静脈症候群(顔面浮腫・頸部怒張)などの局所症状も併発します。
これらの多彩な症状は、がんそのものによるものだけでなく、治療の副作用や合併症も含まれるため、がん専門医による多角的な評価と早期の対症療法が極めて重要となります。
現代の標準治療(化学療法・分子標的薬・免疫療法)
ステージⅣ肺がんの治療は、根治を目指すというより、延命とQOLの維持が中心となります。
主な選択肢は
- 化学療法:シスプラチン+ペメトレキセドなどのプラチナ製剤を用いた治療
- 分子標的薬:EGFR阻害薬(オシメルチニブなど)、ALK阻害薬、ROS1阻害薬など
- 免疫チェックポイント阻害薬:PD-1/PD-L1阻害剤(ペムブロリズマブ、ニボルマブ)で、特にPD-L1高発現例に有効
となり、これらの治療は、患者さんの遺伝子プロファイル、年齢、全身状態(PS)などによって選択されます。特にPS 0-1であれば多くの治療選択肢が考慮可能です。
QOLの課題と緩和ケアの実際
肺がんが末期に進行すると、呼吸困難、胸水、骨痛、神経症状などが現れ、患者さんの生活の質(QOL)が大きく低下します。
緩和ケアの主な目的は、疼痛や不快症状の軽減だけでなく、心理的・社会的サポートも含みます。
具体的には
- 疼痛管理:オピオイド(モルヒネ・オキシコドン)や神経ブロックの活用
- 呼吸管理:在宅酸素療法、胸水穿刺、ステント留置
- 心理ケア:カウンセリング、精神腫瘍医との連携
- 栄養・生活支援:栄養指導、在宅療養の導入
緩和ケアは末期のみの選択肢ではなく、診断直後から導入することで生存期間の延長に寄与するともいわれています。
光免疫療法:新たな治療戦略としての可能性
当院が提供する光免疫療法は、自由診療として末期肺がんに対応しています。
ICGをリポソーム化し、EPR効果でがん細胞に選択的集積後、近赤外線レーザーで照射します。
活性酸素によりアポトーシスを誘導し、免疫刺激で転移巣にも効果が期待されます。
治療プロトコルは週1回×6回(1クール)で、血管内治療(CTC除去)併用で再発予防も図ります。
標準治療との併用も可能であり、副作用は軽度(発赤・軽熱感)で外来通院によって完結します。
当院の光免疫療法についての詳細は、下記リンクよりご確認いただけます。
まとめと今後の展望
末期肺がんは依然として予後不良な疾患であるものの、分子標的薬や免疫療法の進化により、生存期間の延長とQOL改善が可能になりつつあります。
さらに、光免疫療法などの自由診療における新たな選択肢も登場しており、多角的なアプローチで患者様の希望に沿った治療を提供することが求められています。
当院では、標準治療と自由診療を組み合わせたハイブリッドな治療提案を行っており、セカンドオピニオンやご相談も随時受け付けております。
どうぞお気軽にご相談ください。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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