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大腸がんの肝転移(ステージⅣ)に関する治療の選択肢
大腸がんは日本で最も罹患数の多い消化器がんの一つです。
ステージⅣでは遠隔転移が特徴的で、特に肝転移は約50%の症例で認められ、最も頻度の高い転移形態です。
これは、大腸静脈から門脈を経て肝臓にがん細胞が直接流入する血行性転移が主な原因となります。
肝転移の発生は予後を悪化させ、中央生存期間を未治療で6〜12ヶ月、治療施行で24〜36ヶ月程度に短縮しますが、分子プロファイリングに基づく個別化治療の進歩により、限局性転移例では5年生存率30〜50%達成も可能となっています。
治療選択は転移数・大きさ、肝機能、分子特性などを総合的に評価し決定されます。
肝転移に対する一般的な治療方針
ステージⅣ大腸がんの肝転移治療は、転移の限局性と患者様のPS(パフォーマンスステータス)により、手術根治を目指す積極的アプローチから、全身療法中心の緩和的アプローチまで多岐にわたります。
まず、CT/MRI/PET-CTで転移の数・位置・血管侵襲を評価し、切除可能であれば外科的切除を第一選択とし、5年生存率40〜60%の報告があります。
切除不適応例(多発転移、両側葉、門脈腫瘍塞栓)では、化学療法で縮小を試み、再切除適応を獲得する戦略が標準となります。
全体として、延命とQOL維持を両立する個別化が鍵といえます。
化学療法の主な種類とその目的
ステージⅣ肝転移の化学療法は、腫瘍縮小・転移巣切除適応獲得・症状緩和を目的とし、分子特性に基づく併用療法が主流です。
KRAS G12C変異に対するスロタシブ併用が承認され、選択肢が拡大しています。
主なレジメンは以下の通りです。
| 治療法 | 特徴・目的 |
|---|---|
| FOLFOX | 5-FU + レボホリナート + オキサリプラチン。肝転移縮小に有効。神経毒性注意。 |
| FOLFIRI | 5-FU + レボホリナート + イリノテカン。FOLFOX耐性後に移行。消化器毒性強いが、肝転移制御に寄与。 |
| 分子標的薬併用 | ベバシズマブ(血管新生阻害)+ FOLFOX/FOLFIRI。RAS野生型ならセツキシマブ(抗EGFR)追加。BRAF変異例はエンコラフェニブ併用。 |
| 第三選択以降 | トリフルリジン・チピラシル + ベバシズマブ。レゴラフェニブ。 |
副作用(骨髄抑制、末梢神経障害、下痢)管理のため、G-CSFや支持療法の併用を行います。
肝転移多発例ではHAIC(肝動脈注入)で局所濃度を高め、効果を強化します。
局所療法という選択肢
肝転移の局所療法は、全身療法と併用し、限局性病変のコントロールや切除適応獲得を目指します。
| 局所療法名 | 適応と特徴 |
|---|---|
| RFA(ラジオ波焼灼) | 経皮的針刺入で高周波熱凝固。腫瘍径3cm未満に最適。再発率20%。全身麻酔不要。 |
| MWA(マイクロ波凝固) | RFAより高出力で短時間。腫瘍径3〜5cmの深部腫瘍に有効。肝機能温存に優れ、再発率15%。 |
| TACE(経動脈化学塞栓) | 肝動脈カテーテルで抗がん剤注入+塞栓材。血流遮断で局所濃度向上。肝不全リスク注意。 |
| SBRT(定位放射線療法) | 高精度照射で非外科的制御。腫瘍径4cm未満に適応。再発率10%、肝毒性低(5%未満)。 |
| HIPEC(加温腹腔内化学療法) | 腹膜播種合併例に適応。手術後高温化学薬注入。5年生存率20〜30%。合併症率高(30%)。 |
これらの療法は、切除不適応例の橋渡し治療として有効であり、Y-90選択性内放射線療法も選択肢に追加されています。
光免疫療法の可能性
光免疫療法は、大腸がんステージⅣ肝転移の治療選択肢としても有望です。
この治療法は、光療法と免疫療法を組み合わせた先進医療で、がん細胞に選択的に集積する光感受性物質を点滴で投与した後、特定の波長のレーザー光を照射することで、活性酸素を発生させがん細胞を特異的に破壊します。
正常細胞への影響を最小限に抑え、がん細胞の抗原放出を促進して免疫応答を活性化する点が特徴です。
大腸がんが肝臓や骨などに転移している場合でも、病変が光の照射で到達可能な範囲に限局していれば、この治療法が適応となる可能性があります。
また、全身状態が安定していない患者様においても、局所への照射が可能であれば、標準的な治療が困難な状況下での一つの選択肢となる場合があります。
ただし、光免疫療法はすべての患者様に適応できるわけではなく、導入には慎重な検討が必要です。
照射対象となる病変の部位やがんの進行状況、患者様の全身状態などを踏まえ、医師が総合的に判断して治療方針を決定します。
当院で実施している大腸がんへの光免疫療法に関する詳細は、以下のページをご参照ください。
まとめ「生活の質を重視した治療選択」
大腸がんステージⅣ肝転移は予後が厳しい疾患ですが、外科切除、化学療法、局所療法、光免疫療法の多様な選択肢により、生存延長とQOL維持が現実的となります。
治療の鍵は、患者様の肝機能・PS・希望を尊重した個別化です。
早期に専門医と相談し、信頼できる医療機関での診断・治療を受けることが、より良い結果につながります。
当院の光免疫療法の適用など、疑問点はお気軽にご相談ください。
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【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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