炎症性乳がんの詳細な概要
炎症性乳がんとは、がん細胞が乳房の皮膚内のリンパ管を塞ぐ疾患であり、非常に悪性度の高いがんです。
全ての乳がんのうち、約0.5~2%程という稀な乳がんであり、乳腺炎や他の乳がんと誤診がされやすいです。
炎症性という理由は、乳房が赤く腫れて炎症のように見えるためです。
炎症性乳がんの特徴
炎症性乳がんの特徴として、以下のようなことが挙げられます。
・他のがんと比較して若年で診断される傾向がある
・肥満女性の方が高頻度で認められる
・ホルモン受容体陰性であることが多く、タモキシフェンなどのホルモン療法剤で治療できない
・男性でも発症することがあるが、女性より高齢で発症する傾向にある
炎症性乳がんの診断
炎症性乳がんは診断が難しいがんであり、視触診やマンモグラフィー検査によって発見できないことが多いです。
さらに、女性患者の大多数は乳房組織が高濃度であるため、マンモグラフィーでがんを見つけ難くなります。
乳房と腋窩リンパ節のマンモグラフィーや超音波検査、CT検査やPET、骨シンチグラフィーなどによって慎重に診断を行います。
診断時の炎症性乳がんは、リンパ節転移のみか、他の組織にも転移しているかどうかによって、ステージⅢB、Ⅳのいずれかに分類されます。
炎症性乳がんの症状とその進行
炎症性乳がんの症状としては、以下のようなものが現れます。
・紅斑(発赤)
・浮腫
・乳房の色の変化(桃色、赤紫色)
・橙皮状皮膚(皮膚の盛り上がりやくぼみ)の発症
・乳房の異常な熱感
・乳房の3分の1以上の浮腫と紅斑
・乳房の増大と重感
・圧痛
これらの症状は、乳腺炎や他の乳がんのと誤診されることもあります。
また、炎症性乳がんは数週間~数ヵ月で進行することが多く、マンモグラフィの定期検診の間に発生し、急速に進行する可能性があります。
炎症性乳がんの治療について
炎症性乳がんは、手術や放射線療法といった局所治療のみで完治させることは難しいため、複数の治療を組み合わせて集学的治療を行います。
再発・遠隔転移のリスクが高いタイプのがんのため、針生検などで病理診断を行った後、最初に化学療法(抗がん剤)による全身療法を行います。
化学療法の際に、HER2タンパク陽性の場合は、トラスツズマブ(ハーセプチン)も併用します。
抗がん剤の効果によって腫瘍が縮小すれば、手術を行います。
再発リスクを考慮して、乳房温存術は推奨されず、乳房切除術を行うことが一般的となります。
術後には、再発予防の目的で放射線療法を行います。
また、ホルモン受容体陽性の場合には、術後にホルモン療法を行うこともあります。
抗がん剤の効果が認められない場合、手術は行わず放射線療法を行います。
炎症性乳がんは、その性質から全身療法が必須と考えられています。
光免疫療法の可能性
炎症性乳がんの治療は、上記のような集学的治療を行います。
光免疫療法は、特定の波長の光を照射してがん細胞を攻撃する方法で、副作用が少ないという特徴があります。
集学的治療の一つとして光免疫療法も候補として挙げられる可能性があります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめと今後の展望
炎症乳がんは早期発見が困難であり、進行も非常に早く、他の乳がんと比較しても予後が悪い乳がんです。
しかし、化学療法、手術、放射線療法などを組み合わせる集学的治療によって、徐々に治療成績は向上しています。
集学的治療の一つとして、光免疫療法も候補として入れる可能性があります。
また、治療後の再発や遠隔転移のリスクが高いため、定期的なフォローアップが必要となります。
乳がん検診の普及や今後の新しい集学的治療の組み合わせにより、炎症性乳がんの予後がより良くなることを期待しています。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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