浸潤性乳管がんとは
浸潤性乳管がん(Invasive Ductal Carcinoma, IDC)は、最も一般的な乳がんの形態であり、乳がん全体の80%以上を占めています。
このがんは、リンパ管や血管を通じて乳管の外に浸潤しています。
がんの進行度(ステージ)によって治療法や予後は異なりますが、遠隔転移が無ければ生存率も高く治癒を目指せる病気となります。
リスク要因
乳房にがん細胞が発生する直接の原因は、まだ解明されていません。
しかし、以下のことがリスク要因となることはわかっています。
遺伝的要因
乳がん全体の約7~8%は、遺伝的要因がある遺伝性乳がんといわれています。
遺伝子変異、特にBRCA1やBRCA2の変異は、遺伝的要因での乳がんの発生リスクを高めます。
これらの遺伝子は通常、がん抑制遺伝子として機能し、細胞の異常増殖を防ぐ役割を果たしています。
このBRCA1やBRCA2遺伝子の病的な変異は、性別を問わず親から子へ約50%の確率で受け継がれるといわれています。
女性ホルモン
乳がんの発生には、女性ホルモン(エストロゲン)が深く影響することがわかっています。
初潮が早い、閉経が遅い、出産経験がない、初産が遅い、授乳経験が無い、経口避妊薬の使用、閉経後の長期間のホルモン補充療法などが乳がんの発生リスクを高めると考えられています。
生活習慣と環境因子
肥満(特に閉経後)、糖尿病、喫煙、過度のアルコール摂取などの生活習慣は、乳がん発生のリスクを高めるとされています。
逆に、閉経後の適度な運動については、乳がんの発生リスクを低減させるといわれています。
年齢と性別
年齢の増加は、浸潤性乳管がんのリスクを高める主要な因子です。
女性は男性よりもこのがんに罹患する確率が高く、特に閉経後の女性でリスクが増加します。
乳がんのサブタイプ
がん細胞が持つ遺伝子の特徴によって、乳がんを分類したものをサブタイプと呼びます。
サブタイプは、手術前や手術後に行われる病理検査(細胞診)で、がん細胞の表面にあるタンパク質を調べて判定されます。
ホルモン受容体の有無、HER2タンパクの有無、がん細胞の増殖能がわかるKi-67の発現状況によって、以下の5つのサブタイプに分類されます。
・ルミナルA型
・ルミナルB型(HER2陰性)
・ルミナルB型(HER2陽性)
・HER2型
・トリプルネガティブ(ホルモン受容体陰性、HER2陰性)
このサブタイプとステージ(進行度)に基づいて治療法の選択や予後が決まります。
検査と診断
浸潤性乳管がんは、視診・触診、マンモグラフィー、超音波検査の3つの検査によってほぼ全ての乳がんの診断が可能です。
乳がんの疑いがある場合、病理診断(細胞診・組織診)によって最終診断を行います。
リンパ節や他の臓器への転移の診断については、CT、MRI、骨シンチグラフィーなどを行います。
これらの検査結果により、がんの進行度や悪性度、転移の有無を確定させ、治療計画を立てていきます。
治療方法
手術
Ⅰ期~ⅢA期の浸潤性乳管がんに対しては、主に乳房温存術や乳房切除術といった手術を行います。
これらの手術は、がん細胞を物理的に切除することを目的としています。
乳房切除術が推奨されますが、腫瘍が小さい場合には乳房温存術も可能です。
放射線療法
乳房温存術後には放射線療法が用いられることが多いです。
がん細胞の残存を抑えることを目的としています。
また、局所再発のリスクを減少させる効果も期待されます。
化学療法とホルモン療法
ⅢB期~Ⅳ期では、主に薬物療法(化学療法・ホルモン療法)を行います。
化学療法は、がん細胞の成長を阻害する薬剤を用いる治療法です。
ホルモン療法は、ホルモン受容体(エストロゲン)陽性の乳がん患者様に対して効果的です。
薬物療法後、しこりやリンパ節の腫れが縮小した場合には、手術や放射線療法を追加で行うこともあります。
Ⅳ期は遠隔転移をしているため、全身治療としても薬物療法を行います。
光免疫療法は、特定の光を当てることで薬剤が活性化し、がん細胞に集積して効果を発揮する治療法です。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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