悪性中皮腫とは
悪性中皮腫は、中皮細胞から発生する稀ながんで、主に肺の周囲、腹膜、心嚢などに見られます。
この疾患は、アスベスト曝露が主な原因とされ、曝露後数十年の潜伏期間を経て発症することが一般的です。
初期症状は非特異的であり、胸痛、呼吸困難、咳などが見られますが、これらは他の疾患と容易に混同されるため、診断が遅れがちです。
診断には画像診断のほか、組織の生検が必要となり、病理学的検査によって確定されます。
悪性中皮腫は、その発生部位や細胞型によって、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心嚢中皮腫などに分類されます。
病理と発症メカニズム
悪性中皮腫の細胞は、中皮細胞が悪性変化を遂げたもので、多形性が特徴です。
アスベスト繊維が肺に入り込むと、肺や胸膜に炎症を引き起こし、長期間にわたる慢性的な刺激ががん化を促進するとされています。
遺伝的要因や免疫系の異常も発症に関与していると考えられ、特にBAP1遺伝子の変異は悪性中皮腫の発症と関連があるとされています。
この疾患は、線維状のアスベストが肺の奥深くに達し、長期間にわたって細胞に損傷を与えることで発生します。
また、炎症反応により放出される活性酸素がDNA損傷を引き起こし、がん化を促進することも示唆されています。
治療方法と展望
悪性中皮腫の治療は、病期や患者様の全身状態に応じて異なり、手術、化学療法、放射線療法が主な治療法です。
手術による完全切除は、早期の患者様においては有効な選択肢となり得ますが、多くの場合は進行が早く、手術が困難な状況にあります。
化学療法では、プラチナ製剤とペメトレキセドの併用療法が一般的ですが、耐性の問題や副作用が課題となっています。
放射線療法は、症状の緩和や局所的な制御に有効ですが、根治的な治療には限界があります。
光免疫療法は、特定の光に反応する薬剤を用いてがん細胞を破壊する方法です。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
予後と生活の質
悪性中皮腫の予後は一般的に厳しいとされていますが、早期発見、早期治療により生存率は向上します。
症状の管理と生活の質の向上にも注力が必要で、疼痛管理、栄養療法、心理的サポートなど、総合的なケアが重要となります。
患者様のQOL(生活の質)を維持するためには、症状に合わせた個別のケアプランの策定が必要です。
また、患者様とその家族に対する情報提供やサポートも、治療の一環として重要です。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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