卵巣がんの進行期
卵巣がんの進行期は、初回手術の病理検査によって、がんがどの程度拡がっているかを確認して決定される「手術進行期分類」が用いられます。
進行度によりステージⅠ期~Ⅳに大きく分類され、ステージⅡ期とは、「腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん」と定められています。
また、ステージⅡ期は、「進展が子宮あるいは卵管に及ぶ」というⅡA期と、「他の骨盤内腹腔内臓器に進展する」というⅡB期に細分化されます。
進行期(ステージ)と組織型、異型度によって治療法が選択されるため、それらの要素を把握することは非常に重要となります。
この記事では、ステージⅡ期の卵巣がんについて治療法などを詳細解説します。
初期卵巣がんの症状
卵巣がんは、サイレントキャンサーと呼ばれるように、自覚症状がほとんど無いのが特徴の一つです。
進行がんになっても自覚症状を感じない人もいますが、早期段階でも以下のような症状を感じることもあります。
症状 | 詳細 |
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腹部の違和感と痛み | 卵巣の腫瘍が成長して周りの組織を圧迫し、腹部の違和感や腹痛・腰痛を引き起こすことがあります。 |
腹部の張り | 卵巣がんが大きくなったり、腹膜播種が引き起こされると、腹水が貯留されることがあります。それに伴い腹部が前に突き出して張った状態となります。 |
便秘・頻尿 | 卵巣がんが大きくなったり、腹水の貯留によって直腸が圧迫されると、便が通過しづらくなって便秘になります。また、膀胱も圧迫されるため頻尿になることもあります。 |
強い生理痛・月経異常 | がんが卵巣の両側にある状態まで進行すると、強い生理痛や月経異常が現れることがあります。 |
急激な体重増減 | 卵巣がんの進行に伴って腹水が貯留して体重が増加したり、全身性炎症反応によって体重が減少したりすることがあります。短期間で大きな体重の増減があった場合は、卵巣がんが疑われます。 |
診断
卵巣がんの確定診断は、CTやMRI検査といった画像診断のみでは行わず、手術による病理検査によって行われます。
診断手段 | 詳細 |
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内診 |
腟から指を入れ、子宮や卵巣を直接触り、腫瘍の有無や卵巣の腫れ・炎症などを調べる検査です。 下腹部にしこりがある場合、卵巣がんが疑われますが、初期の小さながんは見落とされる可能性があります。 |
画像検査 | 内診の後、画像検査が行われます。主に超音波検査、CT、MRI検査を行い、卵巣の腫瘍の大きさや位置、転移の有無が確認されます。 |
腫瘍マーカー検査 |
腫瘍マーカー検査では、がんが存在することで増える特定のタンパク質量を測定します。 がんの種類ごとに異なり、主にがんの診断補助や、診断後の治療効果の確認などに用いられます。 しかし、腫瘍マーカー検査が卵巣がんの早期発見に有効であるというデータは得られていません。 |
手術(細胞診・組織診) |
手術によって細胞・組織を摘出して、病理検査を行うことでがんの種類・ステージを特定します。 卵巣がんは、超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査のみでは確定診断ができないため、手術(細胞診・組織診)が必要となります。 |
治療法
卵巣がん治療は、どのステージの場合にも基本的には手術療法と抗がん薬などの化学療法を併せて行います。
治療法 | 説明 |
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手術 |
進行期や組織型・異型度を見極めるための確定診断と、がんをできるだけ摘出することを目的として初回手術が行われます。 ステージⅡ期では、両側の卵巣と卵管、子宮、大網を摘出し、後腹膜リンパ節を郭清する手術(基本術式)が行われるとともに、骨盤内のがんの切除も加わります。 |
化学療法 |
手術でがんを可能な限り取り除いた後、術後治療として化学療法を行います。 また、がんが進行していて手術の適用が困難な場合には、術前化学療法によってがんを縮小化して、その後手術を行うこともあります。 卵巣がんは、抗がん剤の効きやすいタイプのがんが多く、化学療法を行うことによって手術で取り切れなかったがんを消失させる以外にも、再発を予防する効果もあります。 |
放射線療法 |
再発卵巣がんに対して放射線療法が行われる場合があります。 痛みや転移先の症状を和らげるために、局所的な治療として検討されます。 |
維持療法 |
手術や化学療法後に、がんが再発や成長を防止するための維持療法が検討されます。 維持療法では分子標的治療薬が用いられており、血管新生阻害薬とPARP阻害薬の2種類があります。 |
光免疫療法
光免疫療法は、特定の薬剤と光を組み合わせてがん細胞を攻撃する治療法です。
薬剤はがん細胞に選択的に集積し、その後特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊する仕組みとなっています。
この治療法は、副作用が少なく、患者様の負担を軽減することが期待されています。
光免疫療法は、他の治療法と組み合わせて使用されることもあり、相乗効果が期待出来ます。
現在、卵巣がん治療中の患者様でも適用可能な場合がありますので、一度ご検討ください。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
予後
卵巣がんは、一般的に予後が悪いといわれています。
その理由として、初期症状が少ないため、発見時には進行がんであることが多いことが挙げられます。
進行がんは再発リスクが高く、根治も難しいため一般的に予後は良くないです。
項目 | 説明 |
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生存率 |
卵巣がんステージⅡ期の5年生存率は、約75%となります。 新薬の開発などによって5年生存率は改善されていますので、参考程度に考えるようにしましょう。 |
死亡者数 |
年間1万2千人以上の方が卵巣がんと診断され、年間5千人以上の方が卵巣がんが原因亡くなっています。 生活の変化や高齢化などにより罹患者数が増加しているため、比例して死亡者数も増加傾向となっています。 |
治療効果 | 卵巣がんの基本治療である手術よって、がんをできるだけ取り切れた方が予後が良くなると報告されています。 |
再発転移 |
卵巣がんは、画像診断でがんが見えなくなったとしても、約半数が再発するといわれています。 また、再発してしまうと生存期間の中央値が約2年と短くなり、根治を目指す治療も困難となります。 |
フォローアップと管理 |
卵巣がんは、再発をしやすいがんのため、治療後もフォローアップが必須となります。 特に再発をしやすい初回治療後2年間は、定期的なフォローアップ(内診、各種検査)が重要となります。 |
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次 がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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