膵臓がんの腹膜播種(ステージ4 )に関する治療の選択肢

1. 膵臓がん(ステージ4)の特徴

膵臓がんは進行が早く、発見時にはすでに転移が進んでいるケースが多い疾患です。ステージ4は、がんが膵臓を超えて他の臓器や腹膜へ転移している状態を指します。
特に腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に広がり、腹膜に散らばる形で増殖する状態を指し、膵臓がんの進行において比較的よく見られる転移パターンです。

腹膜播種が生じると、以下のような症状が現れることがあります。

症状	説明
腹水の貯留	がん細胞が腹膜に広がることで、腹水が溜まりやすくなり、腹部の膨満感や呼吸のしづらさを感じることがあります。
消化器症状	腸管への影響によって、食欲不振、吐き気、便秘や腸閉塞などの症状が起こることがあります。
体重減少・全身倦怠感	がんの進行により、栄養の吸収が妨げられ、体重減少や全身の倦怠感が強くなります。

膵臓がんステージ4では、外科手術による根治治療が困難であり、標準的な治療としては抗がん剤治療が中心となります。使用される代表的な薬剤には以下のようなものがあります。

治療法	使用薬剤
FOLFIRINOX療法	フルオロウラシル（5-FU）＋ロイコボリン＋イリノテカン＋オキサリプラチン
ゲムシタビン＋ナブパクリタキセル併用療法	ゲムシタビン＋ナブパクリタキセル

これらの化学療法は、がんの進行を抑える目的で行われますが、副作用として骨髄抑制、消化器症状、脱毛、全身倦怠感などがみられることがあります。
また、腹膜播種がある場合は腹水コントロールも治療の重要な要素となり、以下のような対策が取られます。

腹水の管理方法	説明
利尿剤の使用	体内の余分な水分を排出するために、利尿剤を使用し、腹水の増加を抑えます。
腹水穿刺・腹水濾過濃縮再静注法（CART）	腹水を穿刺（針を刺す）して排出し、濾過・濃縮した後に、必要な成分を患者様の体内に戻す方法です。
腹膜透析カテーテルの挿入	長期間の腹水管理が必要な場合に、腹膜透析カテーテルを挿入し、腹水の排出を容易にする方法です。

膵臓がんステージ4の患者様の中には、体力や副作用の問題で抗がん剤治療を継続できない場合や、がんが進行し標準治療の効果が期待できなくなる場合があります。
そのような場合、緩和ケアを中心に、生活の質（QOL）を維持するための治療が選択されることもあります。

膵臓がんの治療法のひとつとして光免疫療法が選択肢となる可能性があります。
光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積する薬剤を投与し、その後、特定の波長の光を照射することで、がん細胞を選択的に破壊する治療法です。

光免疫療法の特徴	説明
選択的にがん細胞を攻撃	正常細胞への影響を抑えつつ、がん細胞を破壊する。
副作用が比較的少ない	標準的な抗がん剤治療と比較して、副作用が少ないとされる。
局所制御が可能	特に、標準治療が難しいケースでの治療選択肢となる可能性がある。