目次
1. 直腸がんとは
直腸がんは、大腸がんの中でも直腸に発生するがんを指します。
直腸は、消化された食べ物の最終的な通過点であり、肛門に近い部分に位置しています。
直腸がんは、初期段階では症状が現れにくいこともありますが、進行するにつれて血便、便通異常、腹痛などの症状が見られるようになります。
2. ステージ4とは
がんの進行度は、一般的にステージ(病期)によって分類されます。
ステージ4は、がんが原発巣(直腸)から他の臓器へ転移している状態を指します。
直腸がんの場合、肝臓、肺、腹膜などに転移することが多く、特に肝臓への転移は頻繁に見られます。
ステージ4と診断された場合、がんが全身に広がっている可能性が高く、治療方針も大きく変わってきます。
3. 直腸がんの肝転移とは
肝臓は、血液が集まる重要な臓器であり、直腸から流れる血液も門脈を通じて肝臓に運ばれるため、がん細胞が最初に転移しやすい場所とされています。
直腸がんが肝転移を起こすと、肝機能に影響を与えるだけでなく、転移巣が増えることで治療が難しくなることがあります。
肝転移が限局的な場合(転移が少数で局所にとどまっている場合)は、手術によって切除を目指すことが可能です。
しかし、多発していたり、肝臓全体に広がっている場合は、手術が難しく、薬物療法中心の治療となることが多くなります。
4. ステージ4肝転移に対する標準治療
直腸がん(ステージ4)肝転移の標準的な治療には、以下の方法があります。
化学療法(抗がん剤治療) |
肝切除術(外科手術) |
局所治療(ラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法など) |
分子標的薬治療 |
免疫チェックポイント阻害薬 |
まず、全身化学療法が行われ、がんの縮小や進行抑制を目指します。
抗がん剤の組み合わせにはFOLFOX(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)、FOLFIRI(5-FU+ロイコボリン+イリノテカン)などがあり、さらに分子標的薬(ベバシズマブやセツキシマブ)を併用することもあります。
効果が得られた場合、肝転移巣を外科的に切除することで長期生存を目指す戦略もとられます。
しかし、すべての患者様が手術可能とは限らず、がんの広がり具合、肝機能、全身状態などを総合的に判断する必要があります。
5. 標準治療が難しいケース
肝転移が広範囲に及んでいたり、他の臓器(肺や腹膜など)にも転移が認められる場合、手術は困難です。
また、これまでに抗がん剤治療を受けた結果、がんが薬剤耐性を持った場合も、標準治療の効果が期待できなくなります。
加えて、患者様自身の体力が低下していたり、肝機能障害が進行している場合には、抗がん剤の副作用に耐えられないリスクも高くなります。
そのため、標準治療が難しいと判断されるケースでは、治療方針の見直しや新たな選択肢を検討することが重要です。
6. 代替的な治療選択肢
標準治療が適応できない場合や、標準治療を受けた後に再発・進行した場合、以下のような選択肢が考えられます。
低用量分割療法 |
放射線治療 |
治験への参加 |
先進医療や自由診療による新たな治療法 |
このような状況では、患者様と医療チームが十分に話し合い、治療目的(延命、症状緩和、QOL維持など)を明確にしながら、最適な方法を選んでいくことが求められます。
7. 光免疫療法という選択肢
このような標準治療が難しい直腸がん(ステージ4・肝転移)の方に対して、光免疫療法という選択肢が存在します。
光免疫療法とは、がん細胞へ選択的に集積する特殊な薬剤に近赤外線を照射することで、がん細胞だけを破壊する治療法です。
正常な細胞への影響を抑えながら、がん細胞を狙い撃ちできる点が特徴です。
特に、標準治療の効果が得られにくいケースや、副作用に耐えられないケースにおいて、治療の選択肢となる可能性があります。
ただし、すべての直腸がんに適用できるわけではないため、詳しい適応については専門医との相談が必要です。
当院の光免疫療法の詳細は以下をご参考ください。
8. まとめ
直腸がん(ステージ4)で肝転移を伴う場合、がんの広がり方や患者様の全身状態に応じて、標準治療が難しくなることがあります。
特に多発肝転移や薬剤耐性が生じた場合、治療の選択肢は限られてきます。
そのような状況でも、さまざまな治療法が存在しており、光免疫療法のような選択肢も検討することが可能です。
患者様一人ひとりの状況に応じた柔軟な治療戦略を考え、QOL(生活の質)を大切にしながら前向きに治療に取り組んでいくことが大切です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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