小腸がん(ステージ4)腹膜播種とは
小腸がんは消化管のがんの中では比較的少ない種類に分類されることがあります。
十二指腸・空腸・回腸などに生じる場合があり、腺がんや神経内分泌腫瘍、悪性リンパ腫など様々な型が確認されています。
ステージ4になると、がんが腹膜や他の臓器に広がる状況となることがあります。
腹膜播種では、がん細胞が腹腔内を漂い、腹膜表面に付着・増殖していく現象がみられる場合があります。
この状態では、腹水や腸閉塞、痛み、栄養の吸収障害などが生じやすくなることもあります。
腹膜播種が生じる仕組み
腹膜播種は、原発巣から剥がれたがん細胞が腹腔内に入り込み、腹膜に定着していく経過をたどることがあると考えられます。
小腸がんの場合、腸壁を超えて細胞が漏れ出ることで、腹腔内に散らばっていく可能性があるとされます。
腹腔内の液体の流れや重力の影響を受けて、ダグラス窩や大網、横隔膜下などに集まりやすい傾向がみられることもあります。
進行すると、次のような症状が現れることがあるようです。
症状 | 特徴 |
---|---|
腹水 | 腹部の膨満感や呼吸のしづらさにつながる場合があります。 |
腸閉塞 | 腸管が狭くなり、嘔吐や排便困難が起きることがあります。 |
栄養障害 | 消化・吸収が妨げられ、体重減少につながることもあります。 |
疼痛 | 腹部や背中に痛みが生じる場合があります。 |
倦怠感 | 全身の疲労感が強まることがあります。 |
診断方法
腹膜播種の診断には複数の検査が組み合わされることが多いようです。
検査法 | 内容 |
---|---|
腹部CT | 腹水や腹膜病変、腸管の変化を確認する際に用いられます。 |
腹部MRI | 腹膜の小さな病変や腹水の状態を詳細に評価する場面があります。 |
PET-CT | 全身のがんの広がりや活性度を把握するために使われることがあります。 |
超音波検査 | 腹水の有無や内部の状態を確認する際に行われることがあります。 |
腫瘍マーカー | CEAやCA19-9の数値を参考とする場合があります。 |
腹腔鏡検査 | 直接腹腔内を観察し、組織を採取する目的で実施されることもあります。 |
治療における課題
小腸がんは全体として発症頻度が少なく、腹膜播種を伴う進行例では治療法の統一が難しい面があるようです。
以下の治療法が検討される場合がありますが、患者様の状態によって判断が分かれることが多いようです。
治療法 | 内容 |
---|---|
手術 | 原発巣の切除が試みられることもありますが、腹膜播種そのものの外科的切除は難しい場面も多いとされます。 |
化学療法 | フルオロウラシル系やオキサリプラチン系などが使用されるケースがあります。 |
放射線療法 | 痛みの軽減や局所制御を目的に実施される場合があります。 |
腹腔内化学療法(HIPEC) | 一部の施設で行われることがある治療法です。 |
治療の継続は、体調や副作用の影響により慎重な判断が求められることがあるようです。
支持療法の役割
がん治療と並行して、患者様の生活の質を支える支持療法も重視される傾向があります。
支持療法 | 内容 |
---|---|
腹水管理 | 利尿薬や腹腔ドレナージなどによって腹水の量を調整する方法が取られることがあります。 |
疼痛管理 | オピオイドなどの鎮痛薬が使用されることもあります。 |
栄養管理 | 経口摂取が難しい場合には高カロリー輸液などが利用されることもあります。 |
精神的サポート | 不安や落ち込みに対してカウンセリングなどの支援が行われることがあります。 |
光免疫療法という治療の可能性
この治療は、がん細胞に選択的に集まる光感受性物質を投与し、近赤外線を照射することでがん細胞を破壊するという仕組みです。
正常細胞への影響が比較的少ないとされ、手術や抗がん剤の副作用に耐えられない患者様にも検討されることがあります。
ただし、適応には条件があり、がんの広がり方や患者様の全身状態などを総合的に判断する必要があります。
当院の光免疫療法に関する詳細は以下よりご確認頂けます。
まとめ
小腸がん(ステージ4)腹膜播種は治療が難しい状況のひとつとされます。
治療の選択肢は患者様の体調や希望によって幅広く検討されることが多いようです。
支持療法を含めた全体的なケアを行いながら、新たな治療の可能性も含めて医療チームと相談していく姿勢が大切とされます。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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