肝臓がんにおける化学療法の包括的解説と現代医療の紹介
肝臓がんは、世界保健機関(WHO)によると、世界で6番目に多いがん種であり、毎年約90万人が新たに診断されています。
日本では、肝炎ウイルス感染や生活習慣病の影響で高齢者を中心に発症が多く、早期発見が難しい「沈黙の臓器」として知られています。
この記事では、肝臓がんの概要から化学療法の詳細な解説を行い、その限界を補う現代医療として光免疫療法を紹介します。
肝臓がんの概要
肝臓がんは、主に肝細胞がん(HCC)と肝内胆管がん(ICC)に分類され、HCCが全体の約90%を占めます。
主な原因因子には、B型・C型肝炎ウイルス感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アフラトキシン曝露などが挙げられます。
これらの要因が長期的に肝炎や肝硬変を引き起こし、がん化を促進します。
初期段階では無症状であることが多く、進行すると黄疸、腹水による腹部膨張、食欲不振、体重減少、腹痛、疲労感などの症状が現れます。
診断には、超音波検査、CT/MRI、腫瘍マーカーの測定が生検なしで行われることが一般的です。
進行度に応じてステージ分類(ステージI~IV)され、治療選択が決定されます。
肝臓がんの予後はステージにより異なり、早期発見時の5年生存率は70%以上ですが、進行例では10%未満と非常に厳しいのが現状です。
肝臓がんにおける化学療法の種類とメカニズム
化学療法(抗がん剤治療)は、がん細胞の増殖を阻害する薬剤を用いて腫瘍を縮小・制御する治療法です。
肝臓がんでは、肝機能の低下や腫瘍の多剤耐性が高いため、従来の殺細胞性抗がん剤(例: シスプラチン、ドキソルビシン)の全身投与は効果が限定的で、副作用が問題視されてきました。
しかし、2000年代以降の分子標的薬の開発により、問題点が少しずつ改善されています。
主な種類は以下の通りです。
●分子標的薬: がん細胞の増殖シグナルや血管新生を阻害。代表薬としてソラフェニブ(ネクサバール)、レンバチニブ(レンビマ)、レゴラフェニブ(スチバーガ)など。第一選択としてレンバチニブやソラフェニブが用いられ、進行肝細胞がんの生存期間を数ヶ月延長します。
●免疫チェックポイント阻害薬: 免疫系を活性化してがん細胞を攻撃。アテゾリズマブ+ベバシズマブ(テセントリク+アバスチン)、ニボルマブ(オプジーボ)、デュルバルマブ+トレメリムマブなど。分子標的薬との併用で反応率が向上しますが、全体で15~30%程度といわれています。
●局所化学療法: 肝動脈化学塞栓療法(TACE)。抗がん剤(ドキソルビシンなど)をリピオドールに混ぜ、腫瘍栄養動脈に注入後、塞栓物質で血流を遮断します。肝機能Child-Pugh A~Bの多発性腫瘍に適応され、腫瘍壊死を誘導します。
これらの薬剤は、経口または静脈注射で投与され、がん細胞のDNA合成阻害やシグナル伝達阻害により増殖を抑えますが、肝臓がんの多様な遺伝子変異が耐性を生む要因となっています。
化学療法の利点と課題
化学療法の主な利点は、全身性または局所的に広範ながん細胞を標的とし、遠隔転移例でも進行を抑制できる点です。
特に分子標的薬は、従来の抗がん剤より選択性が高く、生存期間の延長が臨床試験で証明されています。
また、TACEは腫瘍縮小率が高く、症状緩和に寄与します。
しかし、課題もいくつか存在します。
副作用として、手足症候群、高血圧、食欲不振、下痢、疲労、肝機能悪化、免疫関連有害事象(肝炎、皮膚炎など)が挙げられ、特に肝硬変合併例では投与継続が困難となります。
また、反応率の低さ(分子標的薬で10~20%)や耐性獲得、耐性獲得後の治療選択肢の少なさが問題で、Child-Pugh Cの重度肝機能低下例では禁忌となる場合が多いです。
これらの限界を克服するため、個別化医療(バイオマーカーによる薬剤選択)や新規治療の開発が進められています。
光免疫療法の可能性
化学療法の限界を補う現代医療として、光免疫療法も注目されています。
この治療は、光感受性薬剤をがん細胞に集積させた後、特定の波長の光(近赤外線)を照射して活性酸素や熱を発生させ、選択的にがん細胞を破壊します。
当院では、インドシアニングリーン(ICG)を光感受性物質として用いた光免疫療法を提供しており、ICGの肝臓がんへの高い集積性を活かしています。
ICGは従来、肝機能検査薬として承認されており、安全性が高くリポソーム加工によりがん細胞に特異的に蓄積します。
照射後のがん細胞破壊は即時的で、免疫活性化(アブスコパル効果)により遠隔転移にも効果が期待されます。
副作用は軽微(軽い発熱や疼痛)で、肝機能低下例や化学療法不耐例に適応可能です。
繰り返し治療ができ、腹水・黄疸の改善が早期にみられる点も利点となります。
化学療法の代替または併用として、肝臓がんのQOL向上と生存延長に寄与する可能性を秘めていますが、適応は個別評価が必要です。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめ
肝臓がんの治療では、化学療法が進行例の標準として重要な役割を果たしますが、副作用や限定的な効果が課題です。
分子標的薬や免疫薬の進化により選択肢が増えていますが、光免疫療法のような現代医療によって、より低侵襲で選択的なアプローチを提供し、患者様の負担を軽減可能となります。
治療選択は、患者様の肝機能、全身状態、腫瘍特性を総合的に考慮し、専門医と相談することが不可欠です。
肝臓がんに関するご相談や光免疫療法の適用など、当院までお気軽にお問い合わせください。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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