1. 大腸がん(ステージ4)と腹水の関係について
大腸がんは、早期に発見されれば治療による予後も比較的良好な疾患のひとつですが、進行がん、特にステージ4(遠隔転移を伴う段階)になると、治療の難易度が格段に上がります。
中でも「腹水」の出現は、がんが進行し、全身状態の悪化を示す重要なサインであり、治療選択に大きな影響を及ぼします。
2. 腹水とは何か?
腹水とは、腹腔内に異常に液体が貯留する状態を指します。
健康な人でも少量の腹水は存在していますが、がんが進行すると、リンパの流れが阻害されたり、がん細胞が腹膜に広がったりすることで、腹水の量が増加していきます。
これががん性腹膜炎やがん性腹水と呼ばれる状態です。
■なぜ大腸がんで腹水が出るのか?
原因 | 説明 |
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腹膜播種(ふくまくはしゅ) | がん細胞が腹膜に散らばることで、腹膜が炎症を起こし、腹水が産生されやすくなります。 |
リンパ管や静脈の閉塞 | がんが周囲の血管やリンパ管を圧迫・閉塞することで、体液がスムーズに循環せず、腹腔にたまります。 |
低アルブミン血症 | 栄養状態が悪化すると血中のアルブミン(血漿タンパク)が低下し、水分が血管外に漏れ出しやすくなります。 |
肝機能障害 | 大腸がんは肝臓への転移が多く、肝臓の機能が損なわれると、腹水が溜まりやすくなります。 |
■腹水による症状と日常生活への影響
症状 | 説明 |
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腹部の膨満感、圧迫感 | 腹水によってお腹が張り、圧迫されるような感覚が続きます。 |
食欲不振、吐き気 | 胃が圧迫されることで、食欲が減退し、吐き気を伴うことがあります。 |
呼吸のしづらさ(横隔膜が圧迫される) | 腹水により横隔膜が持ち上げられ、呼吸が浅くなったり、苦しくなります。 |
排尿・排便のしにくさ | 内臓が圧迫されることで、膀胱や腸の機能にも影響が出ることがあります。 |
動きづらさや倦怠感 | 体が重く感じたり、全身のだるさが強くなり、日常生活が困難になります。 |
これらの症状は、単に身体的な苦痛だけでなく、食事や排泄、睡眠などの日常生活全体に影響を及ぼします。
また、精神的にも大きなストレスとなるため、患者様のQOL(生活の質)は著しく低下します。
■標準治療が難しくなる理由
理由 | 説明 |
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全身状態(パフォーマンスステータス)の低下 | 腹水の影響で体力や活動能力が低下し、治療に耐えられる状態ではなくなることがあります。 |
肝機能や腎機能の低下 | 薬の代謝・排泄に関わる臓器の働きが弱まり、副作用が強く出るリスクが高まります。 |
点滴や注射が困難になる | 腹水や浮腫の影響で血管が見つけにくくなり、治療処置自体が難しくなる場合があります。 |
栄養状態の悪化 | 食欲不振や吸収障害により栄養が不足し、治療の副作用に耐える体力がなくなってしまいます。 |
そのため、「がんが進行しているが、もう抗がん剤は難しい」と診断されるケースが多く、家族を含めて次の選択肢をどうするか悩む場面も少なくありません。
■腹水に対する対症療法
対症療法 | 説明 |
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腹水穿刺 | 注射針で腹水を抜く処置。ただし、一時的な効果にとどまり、繰り返す必要がある。 |
利尿剤の投与 | 体内の余分な水分を排出させる。ただし腎機能とのバランスを見ながら慎重に使用。 |
アルブミン製剤の補充 | 血中タンパクを補い、水分の血管内保持を助ける。 |
腹腔内への抗がん剤投与 | 一部の施設で実施されているが、副作用や体力の問題で適応は限られる。 |
3. 光免疫療法という選択肢
近年では、がん細胞を選択的に攻撃することを目的とした「光免疫療法」という治療法が、選択肢となる可能性があります。
光免疫療法は、がん細胞に集まりやすい特定の薬剤を投与し、その後に特定の波長の光を照射することで、がん細胞だけを破壊する治療法です。
この治療は、周囲の正常な細胞への影響が比較的少なく、体への負担も軽減されるとされています。
腹水がある場合でも、全身状態やがんの位置によっては治療の対象となることがあります。
特に、他の治療法で十分な効果が得られなかったケースにおいて、一部の医療機関では光免疫療法を積極的に導入しています。
当院で行っている光免疫療法の詳細については、以下のリンクよりご確認いただけます。
4. まとめ
大腸がんステージ4で腹水を伴う状態は、がんが非常に進行した段階であり、体調や栄養状態が悪化していることが多いため、標準的な治療法を続けるのが難しくなることがあります。
しかし、腹水がある=何もできないというわけではなく、症状を和らげる対症療法や、負担を抑えた治療法を検討することは可能です。
患者様一人ひとりの状態や希望に合わせた柔軟な対応が求められます。
大切なのは、治療の選択肢を「諦める」ことではなく、「探し続ける」ことです。
家族と医療者がしっかり連携し、今できる最善の方法を共に見つけていくことが重要です。
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【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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