卵巣がん(ステージ4)肺転移とは
卵巣がんは初期症状が現れにくく、発見時には進行していることが多い傾向があります。
ステージ4はがんが卵巣の外に広がり、肺などの遠隔臓器に転移している状態を指します。
肺転移では、咳、息切れ、胸痛などの症状がみられることがあります。
ただし、無症状のまま画像検査で見つかるケースもあります。
がんが肺に広がっている場合でも、治療により症状の進行を抑えたり生活の質の維持を目指したりする方針が検討されます。
標準治療が難しいとされる背景
肺転移を伴うステージ4の卵巣がんでは、次のような理由で標準治療が困難になる場合があります。
全身状態の低下 | 肺転移による呼吸機能の低下や体力の減少で、手術や強い抗がん剤治療に耐えにくくなることがあります。 |
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広範な病変の存在 | がんが腹腔内にとどまらず、複数の臓器に広がっている場合、根治的手術が難しいことがあります。 |
再発を繰り返している | これまでの治療歴により、抗がん剤の効果が限定的になる可能性があります。 |
こうした状況では、治療の目的を根治から緩和へとシフトし、生活の質を重視した方針が検討されることがあります。
治療方針として検討される方法
肺転移を伴う卵巣がんにおいては、以下のような治療が組み合わせて行われる場合があります。
化学療法 | 白金製剤やタキサン系薬剤を中心とした全身的な抗がん剤治療が行われることがあります。 |
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分子標的薬 | BRCA遺伝子の異常やHRD陽性などに応じて、PARP阻害薬が用いられるケースがあります。 |
放射線療法 | 肺の限局的な病変に対して、症状緩和や局所制御を目的に照射が行われることがあります。 |
支持療法 | 呼吸ケアや栄養管理、痛みの緩和などを重視したサポートが重要です。 |
これらの治療は単独でなく、組み合わせて行うことで相互補完的に作用することが期待されています。
選択肢としての光免疫療法
一部の医療機関では、選択肢として光免疫療法が検討される場合もあります。
光免疫療法は、がん細胞に集まりやすい薬剤を使い、その薬剤に特定の波長の光を照射することで、がん細胞を狙ってダメージを与える治療法です。
周囲の正常細胞への影響をできるだけ抑え、がん細胞に選択的に作用することを目的としています。
ただし、すべての患者様に適応されるわけではなく、対応している医療機関も限られているため、詳細は医師とよく相談することが推奨されます。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
まとめ
卵巣がんのステージ4で肺転移がある場合、標準治療だけでは対処が難しいとされる状況に直面することもあります。
そのような中でも、抗がん剤、分子標的薬、放射線療法などを組み合わせた治療が検討されるほか、生活の質を大切にした支持療法も重視されます。
さらに一部では、光免疫療法のような治療も導入されつつあり、多様な選択肢の中から方針を組み立てることが重要です。
治療の可否や効果は個人差があるため、患者様ご本人の希望や体調をふまえ、医療チームとよく相談しながら納得のいく治療を選ぶことが大切です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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