目次
1. 前立腺がんの基礎知識
前立腺がんは、男性に多く発生するがんの一つで、前立腺という膀胱の下に位置する臓器にできる悪性腫瘍です。
初期段階では自覚症状がほとんどないことが多く、検診などで偶然発見されるケースも少なくありません。
しかし、がんが進行するにつれて排尿障害や血尿、腰痛などの症状が現れることがあります。
2. ステージ4とは
がんの進行度を表す「ステージ4」とは、前立腺にとどまらず、周囲のリンパ節や骨、さらには他の臓器にまで転移している状態を指します。
前立腺がんは骨への転移が多いことで知られていますが、まれに肝臓や肺にも転移することがあります。
特に肝臓への転移は、病勢が進んでいるサインとされ、治療方針も大きく変わる可能性があります。
3. 前立腺がんの肝転移とは
肝臓は、血流が豊富な臓器であるため、がん細胞が血液に乗って運ばれやすい特徴を持っています。
前立腺がんが肝臓に転移した場合、一般的には多発性(複数箇所)の転移となることが多く、肝機能への影響や全身状態の悪化を招く恐れがあります。
肝転移がある前立腺がんは、比較的悪性度が高いタイプである可能性があり、慎重な治療判断が求められます。
4. 肝転移がある場合の標準治療
通常、前立腺がんのステージ4では、以下の治療が標準的に行われます。
治療法 | 内容 |
---|---|
ホルモン療法 | アンドロゲン除去療法 |
化学療法 | ドセタキセル、カバジタキセルなど |
新規ホルモン療法薬 | アビラテロン、エンザルタミドなど |
しかし、肝転移が進行している場合、これらの治療が十分な効果を発揮しにくいケースもあります。
たとえば、ホルモン療法に対する抵抗性が強く、薬剤の効果が得られにくい場合や、副作用によって治療の継続が難しくなる場合もあります。
さらに、肝機能が低下している場合、抗がん剤治療が身体に与える負担が大きくなり、安全に投与できないこともあります。
そのため、標準治療だけでは十分に対応できない状況に直面することも少なくありません。
5. 標準治療が難しい場合の選択肢
標準治療が難しい場合でも、以下のような治療が検討されることがあります。
治療の選択肢と内容 |
---|
臨床試験への参加 |
緩和ケアを中心とした治療 |
個別化医療(遺伝子解析に基づく治療選択) |
先進医療や自由診療による治療 |
これらの選択肢を検討する際には、患者様ご本人とご家族の希望、全身状態、これまでの治療歴を踏まえて、慎重に判断を行う必要があります。
6. 光免疫療法という選択肢
このような標準治療が難しい前立腺がん(ステージ4・肝転移)の方に対して、光免疫療法という選択肢が存在します。
光免疫療法とは、がん細胞へ選択的に集積する特殊な薬剤に近赤外線を照射することでがん細胞だけを破壊する治療法です。
正常な細胞への影響を抑えながら、がん細胞を狙い撃ちできる点が特徴です。
特に、標準治療の効果が得られにくいケースや、副作用に耐えられないケースにおいて、治療の選択肢となる可能性があります。
ただし、すべての前立腺がんに適用できるわけではないため、詳しい適応については専門医との相談が必要です。
当院の光免疫療法の詳細は以下をご参考ください。
7. 治療選択における大切な視点
前立腺がんステージ4の肝転移に対して治療を検討する際には、以下の視点が重要です。
治療選択時の視点と内容 |
---|
がんの進行スピード |
全身状態(体力や臓器機能) |
生活の質と延命の重視(生活の質(QOL)を重視するか、延命を重視するか) |
これまでの治療履歴と耐性の有無 |
本人と家族の希望 |
たとえば、治療によって期待できる延命効果が少ない場合でも、生活の質を保つことを重視した選択肢を取ることで、より満足度の高い時間を過ごせることもあります。
また、先進的な治療法を取り入れる場合は、メリットだけでなくリスクや費用面についても十分に理解しておくことが大切です。
8. まとめ
前立腺がんのステージ4において肝転移が見つかった場合、標準治療が難しいケースが少なくありません。
ホルモン療法や化学療法が効果を示しにくい状況に直面することもあり、治療の選択に迷う場面も多くなります。
このような場合には、従来の標準治療以外の選択肢も含めて幅広く情報を集め、専門医と十分に相談しながら、ご自身にとって納得のいく治療法を見つけることが重要です。
光免疫療法のような新たなアプローチも選択肢の一つとなり得るため、可能性を閉ざさずに検討を進めていきましょう。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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