トリプルネガティブ乳がんとは
トリプルネガティブ乳がんとは、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2タンパク質が腫瘍細胞に発現していない乳がんのことです。
このタイプの乳がんは、進行が早く、再発リスクが高いという特徴があり、他のタイプの乳がんと比較して予後が悪いことが知られています。
また、ホルモン療法や抗HER2療法が効果を示さず、他の乳がんとは異なる治療が必要となります。
トリプルネガティブ乳がんは、全体の乳がんの約15~20%を占めるとされています。
トリプルネガティブ乳がんのリスク要因
トリプルネガティブ乳がんのリスク要因は、まだ詳しく解明されていません。
しかし、40歳未満の若い女性、アフリカ系やヒスパニック系の女性に多く見られる傾向が明らかとなっています。
その他にも、BRCA1という遺伝子変異で起こる遺伝性乳がんの約70~80%が、トリプルネガティブ乳がんといわれています。
トリプルネガティブ乳がんの特徴
トリプルネガティブ乳がんは、がん細胞の増殖が他の乳がんよりも早く、診断時には進行していることが多いです。
また、他の乳がんと比べて悪性度が高いとされており、早期に転移するリスクがあり、再発率も比較的高いがんとなります。
そして、ホルモン療法や抗HER2療法の効果が期待できないため、他の乳がんと比べて治療選択肢が限られるのが特徴です。
トリプルネガティブ乳がんの治療
トリプルネガティブ乳がんの治療法は、化学療法(抗がん剤)を中心として以下のようなものが挙げられます。
●化学療法(抗がん剤)
化学療法はトリプルネガティブ乳がんの治療の中心となる治療法であり、手術前や手術後に行われることが多いです。
腫瘍の縮小や進行の抑制、再発リスクの低減に高い効果が期待できますが、強い副作用も伴います。
●免疫療法
近年、トリプルネガティブ乳がんの治療法として免疫療法も注目されています。
免疫チェックポイント阻害剤(PD-1/PD-L1阻害薬)によって、免疫系ががん細胞を認識して攻撃するように働きかけます。
●PARP阻害薬
BRCA1/2遺伝子に変異がある患者に対しては、PARP阻害薬という分子標的薬が有効とされています。
PARP阻害薬は、がん細胞のDNA修復を阻害し、がん細胞を死滅させる働きがあります。
光免疫療法の詳細とトリプルネガティブ乳がんへの応用
この治療法は、特定の薬剤と光を組み合わせてがん細胞を破壊することを目的としています。
光免疫療法は、がんの種類や進行度に応じて、他の治療法と併用することも検討されます。
また、トリプルネガティブ乳がんに対しても、進行の抑制や症状の緩和などでの適用も期待されます。
光免疫療法のメカニズム
光免疫療法は、まず特定の薬剤を体内に投与します。
この薬剤は、がん細胞に選択的に集積する性質を持っています。
次に、特定の波長の光を照射することで、薬剤が活性化され、がん細胞を破壊する反応が起こります。
この反応により、がん細胞だけを標的として攻撃することができるため、健康な細胞へのダメージが抑えられます。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
将来的な治療法の拡充
トリプルネガティブ乳がんの治療法は、化学療法だけでなく、免疫療法やPARP阻害薬など様々な有効な治療法が登場しています。
その他にも、抗体薬物複合体(ADC)などの新しい治療法も注目されており、光免疫療法もその一つとなります。
トリプルネガティブ乳がんは、患者様によって遺伝の有無や腫瘍の特徴や悪性度が異なるため、更なる個別医療の進展・拡充が必要とされています。
まとめ
トリプルネガティブ乳がんは、治療法が限定され、進行が早く、予後も悪いタイプの乳がんです。
免疫療法やPARP阻害薬といった効果的な治療法も開発されていますが、腫瘍の特徴に基づく個別化医療の進展・拡充が今後の課題となります。
光免疫療法は、がん細胞を特異的に攻撃することができ、副作用も少ないという利点があります。
今後、更なる研究と臨床試験により、トリプルネガティブ乳がん患者様への有効な選択肢となることが期待されます。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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