乳がんの治療法
乳がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法があり、それぞれの治療を単独で行う場合と、複数の治療を組み合わせる場合があります。
がんの悪性度や進行度(ステージ)、サブタイプ、健康状態、他の病気の有無などを考慮し治療計画を立てていきます。
乳がんの手術の概要
乳がん治療の基本となる手術は、ステージ0~ⅢA期の場合に行うことが一般的です。
腫瘍の摘出により、がんの拡がりを抑えます。
また、手術前にBRCA遺伝子に異常が認められる場合、手術の選択肢が変わることがあります。
手術の種類
乳がんの手術は、がん細胞(腫瘍)とその周囲の正常乳腺を切除する乳房温存術と、全乳房を切除する乳房切除術に大きく分類されます。
乳房温存術と乳房切除術を比較すると、術後の生存率・再発率には差がないといわれています。
1. 乳房温存術
乳房温存術は、基本的に早期で小さな乳がんに対して適用されます。
マンモグラフィーや超音波検査、MRIによってがんの広がりを見極めた上で、がんから1~2cm離れた周囲を含めて切除します。
そのため、腫瘍がある程度の大きさを超えると、切除範囲が拡大し乳房の変形も大きくなります。
乳房温存術のメリットは、乳房を残すことができ、傷も小さいことです。
そして、術後の痛みや腫れといった症状も少なくなります。
デメリットとしては、がんを全て切除できないリスクがあります。
切り取れず残ったがんは、再発や転移を引き起こす可能性があります。
また、乳房温存術後は、再発リスクを低減させるために放射線治療が必要となります。
2. 乳房切除術
乳房切除は、乳房全体を取り除く手術で、進行した乳がんや再発リスクの高い場合に適用されます。
また、遺伝子検査などで遺伝性乳がんであることが予め分かっている場合、再発リスクを低くするために乳房切除術を行うこともあります。
乳房切除術のメリットは、乳房全体を切除するため、がん組織を全て取り除くことができるということです。
そのため、転移や再発のリスクを低減させることができます。
デメリットとしては、傷が大きいことや、筋膜まで侵襲することもあるため、術後の痛みや腕の動かしにくさといった後遺症のリスクが高くなります。
他にも、全摘出によって乳房の膨らみが失われますので、患者様が喪失感を味わってしまうという精神的苦痛があります。
乳房切除術後の再建手術を希望する患者様も多いです。
再建手術は、人工的な乳房や自身の体組織を使用して乳房の形を再現するものです。
再建手術には、シリコンや生体組織を使用した方法があります。
3.腋窩リンパ節郭清
手術前の触診やマンモグラフィー、手術中のセンチネルリンパ節生検などで腋窩(腋の下)リンパ節にがんが転移していると診断された場合は、腋窩リンパ節郭清(リンパ節の切除)を行います。
腋の下にはリンパ管や神経が集合しているため、腋窩リンパ節郭清を行うと、感覚が鈍くなる、腕が上げにくい、腕の浮腫み(リンパ浮腫)といった後遺症が起きることがあります。
切除する範囲やリンパ節の数は、転移の範囲によって決定されます。
手術の手順
手術は、腫瘍が小さい場合は局所麻酔で行うこともありますが、基本的には全身麻酔で行います。
状況によっては局所麻酔に静脈麻酔を併用して行うこともあります。
まず、がん細胞の位置を特定します。
次に、適切な切開を行い、がん細胞を取り除きます。
手術後、傷口は縫合され、必要に応じてドレーンが挿入されます。
ドレーンは、手術後に皮下に溜まる出血や浸出液を体外に排出するための管であり、乳房切除術や腋窩リンパ節郭清を行う場合、ドレーンを挿入することが一般的です。
手術後、約1週間でドレーンは取り除かれます。
手術の際には、乳がんの広がりやリンパ節への浸潤を確認するための生検も行われることがあります。
術後のケアと注意点
手術後は、出血、痛みや腫れといった症状が起きるリスクがあります。
薬剤や冷却パックを使用して、これらの症状を和らげることができます。
また、手術後のケアとして、定期的な検査やリハビリテーションが必要となることがあります。
術後のケアは、乳がんの再発リスクを低減するために非常に重要です。
リハビリテーションは、手術後の身体の機能を回復させるためのものです。
特に、乳房の再建手術を受けた患者様は、リハビリテーションが必要となることが多いです。
術後のケアには、傷口のケアやリンパ浮腫の予防、運動療法などが含まれます。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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