乳がん(ステージ4)骨転移とは?
乳がんは、がん細胞が乳房の組織に発生する悪性腫瘍であり、進行すると他の臓器や骨へ転移することがあります。
乳がんが骨に転移した状態を「骨転移」と呼び、ステージ4(遠隔転移)に分類されます。
この段階では、がんが全身に広がっているため、根治を目的とした治療が難しくなります。
骨転移の特徴と症状
乳がんの骨転移は、主に脊椎、大腿骨、骨盤、肋骨などに発生しやすいとされています。
骨転移による主な症状には以下のようなものがあります。
症状 | 説明 |
---|---|
痛み | 骨転移の最も一般的な症状で、夜間や動作時に悪化することが多い。 |
骨折のリスク増加 | 骨が脆くなることで病的骨折(わずかな衝撃でも骨が折れる)が起こる可能性がある。 |
脊髄圧迫 | 脊椎に転移した場合、神経を圧迫し、しびれや麻痺、排尿・排便障害を引き起こすことがある。 |
高カルシウム血症 | 骨の破壊が進行すると、血液中のカルシウム濃度が上昇し、倦怠感、食欲不振、意識障害などの症状を引き起こすことがある。 |
標準治療とその課題
乳がん(ステージ4)の骨転移に対して、標準治療として以下の方法が用いられます。
治療法 | 説明 |
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ホルモン療法 | ホルモン受容体陽性の乳がんに対しては、ホルモン療法が行われます。タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などが使用され、がん細胞の増殖を抑えることが目的です。 |
抗がん剤治療 | ホルモン療法が効果的でない場合や、トリプルネガティブ乳がん(ホルモン受容体およびHER2のいずれも陽性でない場合)では、抗がん剤が用いられます。しかし、全身への影響が大きく、副作用として吐き気や脱毛、倦怠感などが生じることがあります。 |
分子標的治療 | HER2陽性の乳がんに対しては、トラスツズマブ(ハーセプチン)やペルツズマブといった分子標的薬が使用されます。これにより、がん細胞の成長を抑える効果が期待されます。 |
骨を保護する治療 | 骨転移の進行を抑えるために、骨修飾薬(ゾレドロン酸、デノスマブ)が使用されることがあります。これにより、骨の破壊を遅らせ、骨折のリスクを軽減できます。 |
放射線治療 | 骨転移による痛みや神経圧迫に対して、放射線治療が有効です。特定の転移部位に放射線を照射することで、痛みの軽減や症状の緩和を図ります。 |
手術 | 病的骨折が発生した場合や、脊髄圧迫が著しい場合には、外科的手術が行われることがあります。これにより、骨の強度を維持し、生活の質(QOL)の向上が期待されます。 |
治療が難しいケースと新たな選択肢
上記の標準治療が適用困難な場合や、副作用の影響で継続が難しいケースもあります。
そのような場合、光免疫療法が一つの選択肢となります。
治療法 | 説明 |
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光免疫療法 | 光免疫療法は、特定の薬剤をがん細胞に集積させた後、近赤外光を照射することでがん細胞を選択的に破壊する治療法です。正常な細胞への影響が少ないとされ、局所的にがん細胞を攻撃することが可能です。
この治療は、標準治療が難しいケースや、全身への負担を軽減したい場合に考慮されます。ただし、適応には医師の判断が必要であり、すべての患者様に適しているわけではありません。 |
生活の質(QOL)の向上
乳がん(ステージ4)骨転移の患者様にとって、治療だけでなく、生活の質を保つことも重要です。以下のようなサポートが役立ちます。
サポート内容 | 説明 |
---|---|
疼痛管理 | 医師と相談しながら、鎮痛剤や放射線治療を適切に組み合わせることで痛みをコントロールする。 |
栄養管理 | 食事のバランスを保ち、筋力維持や免疫力向上を図る。 |
リハビリテーション | 適度な運動やリハビリを行い、体力低下を防ぐ。 |
心理的サポート | カウンセリングや患者支援グループを活用し、不安やストレスを軽減する。 |
まとめ
乳がん(ステージ4)の骨転移は、標準治療が難しい場合があり、患者様ごとに適した治療法を検討する必要があります。
ホルモン療法や抗がん剤治療、放射線治療などが一般的ですが、副作用や治療の適応が課題となることもあります。
そのような場合、光免疫療法が選択肢の一つとなる可能性があります。
治療と並行して、痛みの管理や生活の質の向上を意識し、医療チームと相談しながら最適なケアを選択することが重要です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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