腎がん（ステージ4）肝転移とは
腎がんは、腎臓の細胞から発生する悪性腫瘍であり、進行すると肺や骨、脳、肝臓など他の臓器へ転移することがあります。
中でも肝臓は血流が豊富であるため、がん細胞が転移しやすい臓器の一つです。
ステージ4の腎がんは、原発巣の腎臓から離れた部位に転移が見られる段階であり、根治的な手術が困難になるケースが多くなります。
肝転移を伴う場合、症状としては右上腹部の痛み、体重減少、食欲不振、疲労感、さらには黄疸などが現れることがあります。
腎がんが肝転移する理由
腎がんは他のがんに比べて血管浸潤性が高く、がん細胞が腎静脈から下大静脈を経由して全身に広がりやすい性質を持ちます。
肝臓は全身の血液の約30%が流れ込むため、がん細胞が血流に乗って到達しやすい臓器です。
また、腎がんの転移は比較的ゆっくり進行する一方で、治療に対する反応性が他のがんに比べて異なるため、個別の治療戦略が求められます。
腎がん肝転移に対する標準治療
| 治療法 | 概要 |
|---|---|
| 分子標的薬 | 血管新生を抑える薬剤（チロシンキナーゼ阻害薬など）が中心で、腫瘍の進行を抑える目的で使用されます。腎がんは化学療法が効きにくいため、これらの薬剤が治療の中心になります。 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | がん細胞が免疫から逃れる仕組みを阻害する薬剤です。近年、オプジーボ（ニボルマブ）やヤーボイ（イピリムマブ）などが使用され、治療効果が期待されています。 |
| 外科的切除 | 全身状態が良好で、肝臓内の転移が限局している場合に限り、転移巣の切除が検討されることがあります。ただし、再発リスクが高く、慎重な判断が必要です。 |
| 定位放射線治療 | 局所に限定された転移巣に対し、高精度の放射線を集中照射する治療法です。正常な肝組織への影響を抑えながらがん細胞を破壊できます。 |
標準治療が難しいケース
上記の治療が適応とならないケースも存在します。
たとえば、高齢や併存疾患によって副作用リスクが高い場合、または腫瘍が肝臓内で広範囲に及んでおり、外科的切除が困難な場合などです。
このようなケースでは、緩和ケア中心の対応や、症状のコントロールを目的とした支持療法が選ばれることもあります。
光免疫療法という新たな選択肢
光免疫療法は、がん細胞に選択的に集まる薬剤を投与し、特定の波長の光を照射することで、がん細胞を破壊する治療法です。
正常な肝細胞への影響を抑えつつ、腫瘍細胞にのみ作用することが可能であり、身体への負担が比較的少ない点が特徴です。
特に、腎がんの肝転移において、病変が光を届けられる範囲にある場合には、この療法の適応が検討されることがあります。
全身状態が不安定な患者様においても、局所的な照射で対応できるケースがあり、標準治療が難しい状況における一つの選択肢となり得ます。
ただし、すべての患者様に適用できるわけではなく、照射可能な部位かどうか、腫瘍の性質、患者様の体力などを踏まえて、慎重な評価が必要です。
以下より、当院で提供している光免疫療法の詳細をご確認いただけます。
治療選択における重要な視点
腎がんの治療は、がんの進行度だけでなく、患者様の年齢、全身状態、肝機能、生活の質（QOL）などさまざまな要因を総合的に考慮する必要があります。
特にステージ4においては、延命だけでなく、痛みの緩和や精神的なサポートも重要となります。
医師との十分な相談を通じて、自分らしい治療方針を一緒に考えていくことが大切です。
まとめ
腎がん（ステージ4）で肝転移が確認された場合、従来の標準治療が難しい場面も少なくありません。
しかし、分子標的薬や免疫療法をはじめとする治療戦略、外科的切除や放射線療法などを適切に組み合わせることで、QOLの維持と延命を目指すことが可能です。
さらに、選択肢として光免疫療法のような局所的な治療も登場しており、治療の幅は広がっています。
患者様一人ひとりの状況に合わせて、納得のいく治療を選択することが何よりも重要です。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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