乳がんのステージ4における肺転移とは
乳がんがステージ4と診断された場合、それはがんが原発部位を越えて遠隔臓器にまで転移していることを意味します。
肺は乳がんの転移先として比較的多く、呼吸器症状を伴うこともあります。
肺に転移したがん細胞は、複数の結節として検出されることがあり、進行の程度によっては胸水がたまることもあります。
このような状態では、治療方針の選定に際し、がんの性質や患者様の体調を考慮する必要があります。
肺転移により現れやすい症状
肺転移がある場合、無症状のこともありますが、次のような症状が見られることがあります。
症状 | 内容 |
---|---|
咳 | 持続的な乾いた咳、または痰を伴う咳が出ることがあります。 |
息切れ | 階段の昇降や軽い運動でも呼吸が苦しくなることがあります。 |
胸痛 | 胸の奥に鈍い痛みや圧迫感を感じることがあります。 |
胸水 | 肺を包む胸膜に水がたまり、呼吸機能に影響することがあります。 |
倦怠感・体重減少 | 全身状態の変化により、疲れやすくなったり、体重が減少することがあります。 |
治療方針の基本的な考え方
ステージ4の乳がんでは、がんの根治を目的とした治療は難しいことがあります。
そのため、病状の進行を抑えること、症状を軽減すること、生活の質をできるだけ保つことが大きな目標となります。
治療法は患者様の体力や生活背景、がんの性質に応じて選ばれます。
主な治療法の種類
がんのサブタイプやこれまでの治療歴により、選ばれる治療は異なります。
治療法 | 概要 |
---|---|
ホルモン療法 | ホルモン受容体陽性のがんに対して行われます。比較的副作用が穏やかとされます。 |
分子標的治療 | HER2陽性の患者様に使用される薬剤で、がんの進行を抑えることが期待されています。 |
化学療法 | 全身に作用する抗がん剤を使用する治療で、症状や病変の広がりによって検討されます。 |
免疫療法 | 一部のがんタイプでは、免疫機能を活性化させる薬剤が用いられることがあります。 |
放射線療法 | 症状の軽減や局所の病変に対して照射が行われることがあります。 |
治療選択時に大切な視点
乳がんの肺転移に対して治療を選ぶ際は、単にがんのタイプだけでなく、患者様ごとの背景が大切です。
評価項目 | 内容 |
---|---|
全身状態 | 日常生活の動作や体力の程度により、治療の強度を調整することがあります。 |
治療歴 | 過去に使用された薬剤に対する反応をふまえて、次の治療が選ばれます。 |
副作用の耐性 | 副作用への反応や体調変化をふまえて、治療方針を変更することがあります。 |
患者様の意向 | 治療に対する希望や生活面の事情も考慮されます。 |
選択肢としての光免疫療法
一部の医療機関では、選択肢として光免疫療法が検討される場合もあります。
光免疫療法は、がん細胞に集まりやすい薬剤を使い、その薬剤に特定の波長の光を照射することで、がん細胞を狙ってダメージを与える治療法です。
周囲の正常細胞への影響をできるだけ抑え、がん細胞に選択的に作用することを目的としています。
ただし、すべての患者様に適応されるわけではなく、対応している医療機関も限られているため、詳細は医師とよく相談することが推奨されます。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
まとめ
乳がんのステージ4において肺転移がある場合、病状は個別性が高く、患者様一人ひとりに応じた対応が求められます。
標準的な治療法にはホルモン療法や化学療法、分子標的治療などがあり、がんの特性や患者様の希望をふまえて方針が決定されます。
また、一部では光免疫療法のような選択肢も適応できる可能性があります。
治療の目的は延命だけでなく、生活の質を保つことにもあり、患者様と医療者が協力して最善の方法を探していくことが大切です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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