はじめに
肝がん（ステージ4）肺転移は、原発性の肝細胞がんが進行して肺臓器に転移した状態を指すとされています。
この病期は非常に進行した段階であり、対応できる治療の選択肢が限られるケースもあるため、患者様とご家族にとって大きな不安を伴うことがあります。
ステージ4肝がんの定義と特徴
肝がんのステージ4は、TNM分類において遠隔転移（M1）が認められる段階とされます。
肺転移が確認された場合、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って肝臓から肺に到達し、そこで新たに増殖している可能性があります。
このような進行がみられる場合、全身に影響を及ぼす可能性があり、慎重な対応が求められます。
がん細胞は肝静脈や門脈を通じて血流に乗り、肺の毛細血管に達して定着・増殖することがあります。
肺は全身の血流が集まる臓器であるため、転移先として認められることが比較的多いとされています。
症状と診断
肝がん（ステージ4）肺転移の患者様には、肝臓や肺に関連するさまざまな症状が現れる場合があります。
| 症状の分類 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 肝臓関連症状 |
腹水の貯留
黄疸の出現
肝腫大
腹痛
食欲不振
体重減少
全身倦怠感
|
| 肺転移関連症状 |
呼吸困難
持続する咳嗽
血痰
胸痛
息切れ
|
胸部CTでは肺内の転移性病変を詳細に把握することができ、腹部CTやMRIでは原発巣である肝臓の状態を評価します。
PET-CTは、全身のがんの広がりを調べるために用いられることがあります。
また、AFP（αフェトプロテイン）やPIVKA-II（ビタミンK欠乏または拮抗薬誘導蛋白）などの腫瘍マーカー測定も診断や経過観察の際に活用されます。
予後と生存率
ステージ4の肝臓がんは、進行度が高いことから生存率が低めとされ、厳しい経過をたどる場合もあります。
肺転移を伴う場合、中央生存期間は数ヶ月から1年程度とされることもありますが、個々の状況により大きく異なります。
| 予後因子 | 影響の内容 |
|---|---|
| 肝機能（Child-Pugh分類） |
肝機能が良好な場合は比較的安定した経過が期待されることがあります
肝機能の低下は予後に影響することがあります
|
| Performance Status（全身状態） |
日常生活を自立して行える状態であれば、治療継続が可能な場合があります
全身状態の悪化は治療選択の幅を狭めることがあります
|
| 転移病変の状況 |
転移の範囲が限られている場合、一定の治療効果が期待されることがあります
多発転移では全身状態への影響が大きくなる傾向があります
|
| 腫瘍マーカー値 |
AFPやPIVKA-IIの値が高い場合、病状が進行している可能性が示唆されます
治療後の変化は治療効果の参考にもなります
|
支持療法と緩和ケア
ステージ4肝がん肺転移の患者様に対しては、症状緩和や生活の質の維持を目指したサポートが重視されます。
| 症状 | 対応方法 |
|---|---|
| 腹水 |
利尿剤の投与
腹水穿刺による除去
食事指導（塩分制限など）
|
| 呼吸困難 |
酸素療法
体位の工夫
呼吸リハビリテーション
|
| 疼痛 |
適切な鎮痛薬の使用
WHO方式がん疼痛治療法の適用
神経ブロック療法
|
| 栄養状態 |
栄養管理・栄養補給
経口摂取困難時の栄養支援
食事指導
|
診断の段階から、心身のつらさを和らげる緩和ケアを受けることが可能です。
緩和ケアは終末期だけでなく、治療と並行して行うことで、患者様とご家族の生活の質の維持を支援する重要な医療アプローチとされています。
選択肢としての光免疫療法
一部の医療機関では、治療選択肢のひとつとして光免疫療法を導入している場合もあります。
この治療は、がん細胞に集まりやすい性質を持つ薬剤と、特定の光を組み合わせることで、選択的にがん細胞へ作用させることを目的としています。
正常な組織への影響を抑えながら、がん細胞のみに効果を届けることが期待されています。
ただし、すべての患者様に適応されるわけではなく、対応している医療機関も限られているため、詳しくは医師にご相談いただくことが推奨されます。
以下より当院の光免疫療法に関する情報をご確認いただけます。
まとめ
肝がん（ステージ4）肺転移は、非常に進行した病態であり、対応に工夫を要することが多くあります。
しかしながら、薬物療法、支持療法、緩和ケアなどの医療的支援により、症状緩和や生活の質の維持を目指すことができます。
治療方針の決定にあたっては、患者様ご本人の価値観やご希望を尊重し、十分な情報提供と同意のもとで進めることが大切です。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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