咽頭がん（ステージ4）腹膜播種とは
咽頭がんは、鼻や口の奥にある咽頭に発生する悪性腫瘍です。
上咽頭・中咽頭・下咽頭のいずれかにがんが発生し、それぞれ特徴が異なります。
進行するとリンパ節や肺・骨などに転移することがあります。
ステージ4では、周囲臓器への浸潤や遠隔転移を伴い、治療の難易度が高くなります。
咽頭がんにおいて腹膜播種を生じるケースは稀ですが、まれに血行性あるいはリンパ行性の転移により腹膜への播種が確認されることがあります。
腹膜播種とは、がん細胞が腹腔内に広がり、腹膜に付着して増殖する状態を指します。
腹膜播種を伴う場合、症状の進行が早く、標準治療では対応が難しいことが多くなります。
腹膜播種による症状と影響
腹膜播種が進行すると、以下のような症状が見られることがあります。
| 主な症状 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 腹水の貯留 | 腹部膨満感、食欲低下、呼吸苦などが現れる |
| 腸閉塞様症状 | 腸管が圧迫されることで便秘や腹痛が起こる |
| 倦怠感 | 全身にわたる炎症によって著しい疲労感が続く |
| 栄養不良 | 摂取量の減少と吸収障害で体重が減少する |
標準治療の適用困難な理由
咽頭がんの治療には手術・放射線・化学療法の組み合わせが行われます。
しかし腹膜播種を伴う場合、局所治療だけでは不十分であることが多く、全身療法が中心となります。
抗がん剤による化学療法は一つの手段ですが、腹膜内への薬剤浸透が不均一になることや、副作用によって継続が困難になるケースもあります。
また、原発巣が咽頭部であるため、局所への照射や外科的切除は腹膜への影響を改善する治療にはなりにくいという問題があります。
このため、標準治療だけでの対応が難しいと判断される場面が少なくありません。
治療方針の再考と補完的治療
標準治療が適さない場合には、生活の質（QOL）を重視した治療方針が検討されます。
免疫療法、分子標的薬、温熱療法などが補完的な治療として選択肢に挙がることがあります。
また、患者様の希望を取り入れながら、栄養管理や緩和ケアを併用し、全身状態の安定を図る対応も重要です。
最近では、個別化医療の観点から、遺伝子検査などによって薬剤選択を行うケースも増えています。
患者様の体力、がんの性質、副作用のリスクなどを総合的に評価した上で、治療方針を柔軟に構築する必要があります。
光免疫療法の可能性
光免疫療法は、がん細胞に集まりやすい特殊な薬剤（光感受性物質）を投与し、その後に近赤外線を照射することで、がん細胞だけを選んで破壊する治療法です。
周囲の正常な細胞への影響が少ないとされており、手術が難しい方や副作用の強い抗がん剤の使用が難しい方にも、治療の選択肢として検討されることがあります。
お腹の中にがんが広がる「腹膜播種」のような場合でも、状況によっては光免疫療法が選択肢のひとつとなる可能性があります。
ただし、この治療を行うかどうかは、がんの広がりや患者様の体調などを総合的に考慮し、医師が慎重に判断する必要があります。
当院の光免疫療法に関する詳細は以下よりご確認頂けます。
まとめ
咽頭がんステージ4で腹膜播種がある場合、標準治療では対応が難しくなるケースが多く見られます。
腹膜播種による症状は患者様の生活に大きな影響を与え、治療と同時に症状緩和への対応も不可欠です。
こうした状況下では、従来の治療に加えて、治療手段を取り入れることで、選択肢を広げることが求められます。
光免疫療法を含めた多角的なアプローチを検討しながら、患者様の希望や全身状態を尊重した柔軟な治療方針を構築することが大切です。
【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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