直腸がんの腹膜播種とは
がんが進行すると、がん細胞が腹膜に散らばる「腹膜播種」が起こることがあります。
これは直腸がんがステージ4に分類される大きな要因のひとつです。
腹膜播種があると、がんは手術で取りきれない場合が多く、その場合は根治は難しいと判断されることもあります。
そのため、全身状態や症状に応じて、化学療法や緩和的治療が中心となる可能性があります。
症状と検査方法
腹膜播種では以下のような症状が現れることがあります。
症状 | 説明 |
---|---|
腹部膨満感 | 腹水の蓄積によるものです。お腹が張ってくる感じがします。 |
腹痛・圧痛 | がん細胞が腹膜に付着することで痛みが生じる場合があります。 |
腸閉塞 | 腸の動きが悪くなったり、通過障害が起こることで、嘔吐や便秘になります。 |
食欲不振・体重減少 | 消化器症状や全身状態の悪化によって食欲が低下することがあります。 |
検査には、CT、MRI、PET-CTなどの画像診断に加えて、腹腔鏡や腹水細胞診も行われます。
治療の選択肢
ステージ4の直腸がんに対しては、以下のような治療が検討されます。
治療法 | 概要 |
---|---|
全身化学療法 | 抗がん剤によって、がんの進行を抑え、症状の緩和を図ります。 |
分子標的治療 | がん細胞の増殖を抑える分子を狙った薬を併用することがあります。 |
腹腔内化学療法(HIPEC) | 手術と同時に温めた抗がん剤を腹腔内に循環させて、腹膜播種にアプローチします。 |
緩和ケア | 痛みや不快感を和らげ、生活の質を保つことを目的とした医療です。 |
治療が困難な場合の対応
標準治療が適さない場合には、症状の緩和を重視した方針に切り替えることがあります。
腸閉塞がひどい場合は、人工肛門の造設を検討することもあります。
また、腹水による苦痛がある場合には、腹水の排液や利尿薬による処置が行われます。
光免疫療法という選択肢
従来の治療が難しい患者様の中には、光免疫療法を検討される方もいらっしゃいます。
光免疫療法は、がん細胞に集まる薬剤に近赤外線を照射することでがん細胞を破壊する治療法です。
周囲の正常な細胞への影響を抑えられる可能性があるとされ、一部の患者様には適応できる可能性があります。
以下より当院の光免疫療法の詳細をご確認頂けます。
まとめ
直腸がんが腹膜播種を伴うステージ4に進行した場合、標準治療による完治は難しいことが多くなります。
治療の中心はがんの進行を抑えることや、症状を緩和することに移行します。
選択肢の一つとして光免疫療法も検討されますが、まずは主治医とよく相談し、患者様ご本人とご家族の希望に沿った治療方針を選ぶことが大切です。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
がん治療をお考えの患者様やご家族、知人の方々へ癌に関する情報を掲載しております。
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