1. 肝がん(ステージ4)の概要
肝がん(肝細胞がん、HCC)のステージ4とは、がんが肝臓の外へ広がり、遠隔転移が認められる状態を指します。
特に、腹膜播種(ふくまくはしゅ)とは、がん細胞が肝臓から腹腔内に散らばり、腹膜に転移して増殖する状態です。
この段階では、標準治療である外科手術や局所療法(ラジオ波焼灼療法、経カテーテル動脈化学塞栓療法(TACE))の適応が難しいケースが多く、全身療法(化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤)が主に検討されます。
2. 腹膜播種の特徴
腹膜播種とは、がん細胞が腹腔内に浮遊しながら広がり、腹膜表面や臓器に新たな腫瘍を形成する状態です。肝がんにおいては頻度は高くないものの、以下のような特徴があります:
特徴 | 説明 |
---|---|
進行がんの一形態 | 腹膜播種は進行したがんの一形態であり、治療の難易度が高く、根治が難しい場合が多い。 |
腹水の貯留(がん性腹膜炎) | 腹膜播種によってがん性腹膜炎が発生し、腹水が貯留することが多い。これにより、腹部膨満感や呼吸困難などの症状が現れるため、適切な症状管理が重要となる。 |
腫瘍による影響 | 播種した腫瘍が腸や他の臓器に影響を及ぼし、腸閉塞や消化不良、痛みなどの合併症を引き起こす可能性がある。 |
3. ステージ4・腹膜播種における治療選択肢
ステージ4の肝がんにおいては、がんの進行を抑えることと、生活の質(QOL)の維持が治療の大きな目的となります。以下の治療が検討されます。
治療法 | 説明 |
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分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬) |
現在、肝がんに対する第一選択薬として、レンバチニブ(レンビマ)やソラフェニブ(ネクサバール)が使用されます。 これらは腫瘍の血管新生を抑え、増殖を防ぐ効果があります。 |
免疫チェックポイント阻害剤 |
がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを阻害する治療法です。 アテゾリズマブ(テセントリク)+ベバシズマブ(アバスチン)の併用療法が肝がんに対して承認されており、一部の患者様で腫瘍縮小や長期生存の可能性が示されています。 |
化学療法 |
進行肝がんでは化学療法の有効性は限定的ですが、特に腹膜播種を伴う場合、 シスプラチン+フルオロウラシル(5-FU)などの全身化学療法が選択肢となることがあります。 |
緩和的治療(症状緩和とQOL向上) |
腹水対策:腹膜播種に伴う腹水は、利尿剤や腹水濾過濃縮再静注法(CART)で管理されます。 疼痛管理:がんによる痛みを抑えるために、オピオイドや放射線治療が使用されます。 |
4. 光免疫療法という選択肢
標準治療が難しい患者様の中には、光免疫療法を選択肢として考えるケースもあります。
光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積する薬剤(光感受性物質)を投与し、近赤外線を照射することでがん細胞を破壊する治療法です。
特徴 | 説明 |
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正常細胞への影響が少ない |
光免疫療法は、がん細胞に選択的に集積する薬剤を使用するため、 正常細胞への影響が少なく、副作用が比較的軽度です。 |
局所的な腫瘍縮小が期待できる |
近赤外線を照射することで、標的となるがん細胞を破壊し、 局所的な腫瘍縮小が期待できます。 |
標準治療が難しい患者様でも適用可能なケースがある |
外科手術や抗がん剤治療が適応しにくい患者様に対しても、 適用可能なケースがあるため、選択肢となる可能性があります。 |
5. まとめ
肝がん(ステージ4)で腹膜播種を伴う場合、治療選択肢が限られますが、分子標的薬、免疫療法、化学療法が主な選択肢となります。
さらに、症状緩和やQOLの向上を目的とした治療も重要です。
また、光免疫療法は一部の患者様で適用可能な治療法として選択肢のなる可能性があります。

【当該記事監修者】癌統括医師 小林賢次
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